今回ゲスト、アートアンドヘルスケア株式会社 森下 浩隆 氏は、通販コンサルタント。健康食品・サプリの単品リピート通販企業で広告・CRM・事業戦略を統括し、年商100億規模の成長を牽引。現在は年商3億から100億まで幅広い規模でのサポートをメインとされていらっしゃいます。
森下氏に『食品EC』についてお話をお伺いしました!
▽食品EC市場の現状と課題について教えてください。
食品ECは、EC化率だけを見るとまだまだ伸びしろの大きい市場だと思っています。食品は生活必需品ですし、需要そのものは常にあります。ただ、リアルのスーパーが非常に強いので、ECでの流通量は相対的にまだ少ない状況です。一方で、「食品だから伸びるだろう」と思われがちですが、実際には意外と苦戦している会社も多いです。そこには食品EC特有の難しさがあります。私自身、もともとは福岡で単品リピート通販の会社に入り、物流・システム・コールセンター・広告・CRMなどを一通り経験してきました。当時は会社が1桁億規模から100億円規模まで成長していくタイミングで、かなり現場も見てきました。その後、福岡の明太子メーカーから声をかけていただき、食品通販に関わるようになりました。単品リピート通販で新規集客からCRMまで全部やってきたので、「食品通販も比較的やりやすいだろう」と最初は思っていました。実際、新規集客だけで見ると食品ECはかなりやりやすい部分があります。例えばサプリの単品通販だと、興味関心がない人には刺さりづらいですが、明太子のような食品は「美味しそう」と思ってもらいやすいです。広告の反応も良く、獲得単価(CPO)も単品通販時代の3分の1くらいで取れていました。ただ、実際に収支を細かく見ていくと、思った以上に利益が残らないことに気づきました。食品ECは送料が非常に重く、特にクール便になると1件あたり1,000円前後かかることも珍しくありません。さらに、食品は原価率も高く、サプリなどに比べると利益率がかなり低いので、集客できても利益が削られやすい構造です。
▽食品ECで利益を出すのが難しい理由について教えてください。
食品ECで特に難しいのが、リピート率です。単品リピート通販では、1年後や2年後に回収できれば成立するモデルもありますが、食品ECでは平均購入回数が2〜3回程度というケースがかなり多いです。明太子のような商品だと、スーパーでも買えますし、「毎回お取り寄せしなくてもいいかな」となりやすいです。つまり、食品ECはライバルが非常に多い市場なのです。明太子のライバルは他社の明太子だけではなく、肉も、ふりかけも、海苔も、ご飯のお供全部が競合になります。しかも、多くの事業者が「美味しければ売れる」と考えがちです。もちろん、美味しくないと絶対に売れません。ただ、美味しいだけでは継続的な利益にはつながりにくいのが食品ECの難しさです。
さらに食品は賞味期限があるので、在庫管理や廃棄ロスも発生します。売れればいいというものではなく、「どれだけ利益が残るか」をかなりシビアに見ないといけません。実際、食品ECではどんぶり勘定になっているケースも多く、「売れているのに利益が出ていない」という状況が起こりやすいです。原価や送料、広告費、廃棄ロスなどを細かく管理できていないと、気づかないうちに利益がなくなってしまいます。
▽食品ECで成果を出すために必要な考え方を教えてください。
食品ECで重要なのは、単に広告や販促を強化することではありません。もちろん集客は必要ですが、それだけでは長続きしません。購入回数をどう増やすのか、客単価をどう上げるのか、どこでお客様と接触するのか、そして同時に経費をどう最適化するのかまで含めて設計する必要があります。私自身、食品通販の現場に入った時は、まず全ての数字を分析するところから始めました。CPOをどう下げるか、リピート率をどう改善するか、客単価をどう上げるか、どこに無駄なコストがあるのかを一つずつ整理していきました。
食品ECは比較的参入しやすい市場です。モールに出店すればすぐ販売を始められますし、「美味しい商品があるから大丈夫」と考えて参入するケースも多いです。ただ、実際にはマーケティングだけでは伸びません。お客様が「なぜこの会社から買うのか」を理解しながら、生産性や利益構造まで含めて設計できないと、スケールしていくのは難しいと思っています。
特に中小の食品メーカーや地方の店舗では、「美味しいものを作れば売れる」という感覚が強いケースもあります。しかしECでは配送コストや広告費が発生し、リアル店舗とは全く違う経営になります。だからこそ、数字をしっかり見ながら、「どこにコストをかけるべきか」「どこを削減すべきか」を判断し、利益が残る構造を作ることが非常に重要だと感じています。
~第351回 ゲスト~
森下 浩隆 氏
アートアンドヘルスケア株式会社
代表取締役
通販コンサルタント。健康食品・サプリの単品リピート通販企業で広告・CRM・事業戦略を統括し、年商100億規模の成長を牽引。老舗明太子メーカーのEC再構築を担当し、EC売上4,000万円を1年半で1億2,000万円へ伸ばした後、独立。現在は食品通販の支援をメインに、企業が持つすべての販売チャンネルを組み合わせた独自の「導線理論」「摩擦ゼロ理論」で売上、利益を最大化する。年商3億から100億まで幅広い規模での実績多数。
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