ECサイトは戦略で決まる!売上が変わるマーケティング理論

ネットショップ開業

ECサイトのマーケティング・戦略の基本

幅広い世代へのインターネット環境の普及により、EC業界はその規模を大きく広げています。
まさに群雄割拠とも言える時代の中で、競合他社を出し抜いて売上を伸ばすためには、マーケティング戦略の立案が必要不可欠です。
ここでは、ECマーケティングとは何か、目指すべき到達点はどこか。到達させるまでにどういった戦略を立てるべきかについて解説していきます。

ECマーケティングとは

マーケティングとは「商品が大量かつ効率的に売れるように、市場調査・製造・輸送・保管・販売・宣伝などの全過程にわたって行う企業活動の総称」と辞書において定義されています。つまり商品を売るために行われるあらゆる活動がマーケティングだと言えます。
またECとは「Electronic Commerce」の略称であり、日本語では「電子取引」と表記され、インターネットを介した商品やサービスの売買行為を指します。

よって、ECマーケティングとは「ECサイト上で商品を売るために行われる活動、そのための戦略」を指す言葉です。

では、ECマーケティングと従来のマーケティングにはどのような違いがあるのでしょうか。

 

・インターネット広告

これまでのマーケティングは対面での販売活動を前提としたものでした。例えばチラシ広告やショップに掲示されている商品ポップ、訪問による営業活動などが手法として挙げられます。また、接客の質を向上させ、ユーザーに良い購入体験をしてもらうこともマーケティングの一つだったと言えるでしょう。
しかし、ECにおいては顔を合わせることのないインターネットが主戦場となるため、チラシやポップに変わりWeb広告が登場し、実店舗での試用や接客が出来なくなった分のリカバリーをする必要が生まれてきました。

また、従来のマーケティングは「AIDMAの法則」に従って行われてきました。
これは
「Attention:ユーザーの注意を引き、商品の存在を知らせる」
「Interest:商品に関心を持たせる」
「Desire:商品が欲しいという欲求を抱かせる」
「Memory:商品を記憶させる、また思い出させる」
「Action:商品の購入を実行させる」
という5つのプロセスを指したものであり、この流れは今でも大きく変化していません。

しかし近年では、ECならではの特徴を鑑みた「AISCEAS」というフレームワークが使われています。
これは従来の「AIDMA」の「Desire」が「Search(検索)」に変化し、さらに「Comparison(比較)」「Examination(検討)」、そして最終的には「Share(共有)」の概念が加わったものです。

インターネットを使い、世界中の情報を即座に手に入れられるようになった現代において、ユーザーは関心を持った商品をすぐ検索し、様々なサイトで比較・検討できるようになりました。さらに購入後はSNSやレビューサイトで商品の口コミを共有しているのです。

ECマーケティングを行う場合は、こういったECならではの特色について考えた上で、従来とは異なった戦略を立てる必要があると言えるでしょう。

 

ECマーケティングを行う際の指標

ECマーケティングの特徴の一つに、明確なデータが残る点があります。
例えば訪問ユーザー数や実際に買われた商品の数、ユーザーの年齢・性別、サイトの滞在時間…など、挙げればキリがないほど膨大なデータが蓄積されています。

ここから導き出される、ECマーケティングが上手くいっているかどうかの指標が「CVR(コンバージョン率)」です。
これは「商品の販売数÷訪問ユーザー数×100」で計算される数値で、これが高ければ高いほど、サイトを訪れたユーザーのうち商品に魅力を感じて購入した人の比率が多いといえます。

CVRを上げるためには、成功している競合サイトの分析が大切です。
そのサイトがどのような顧客を対象にし、そのためにどんな広告を打ち、どんなサイト構成にしているのかを研究すれば、自ずとECサイトをどう構築すればいいのかが見えてくるはずです。

また、ECにおいては、1人の顧客から生涯にわたって得られる利益、通称「LTV(顧客生涯価値)」も大切な指標です。
時間や場所を問わず商品を販売できるのもECの特徴です。
しかしこれは他店も同じ条件だと言え、従来ならば近隣のショップだけが競合対象だったのが、インターネット上に出店している同業他社すべてと競争しなければならなくなりました。
そのため、一度商品を購入してくれたユーザーにリピーターになってもらうのは安定した売上の確保に欠かせない要素となっています。
リピーター確保のためには購入後のアフターサポートが肝心です。
購入後も商品に関する質問やクレームを積極的に受け付け、おすすめ商品やセールなどのイベントのお知らせをするメールマーケティングやプッシュ通知なども利用して、LTVの向上を狙いましょう。

ここからは、ECサイトで売上をアップさせるための具体的な戦略を見ていきます。

 

ECサイトにおける7つの戦略

ECサイトの売上を増加させる戦略はいくつかありますが、ここではその中でも特に効果的な7つを紹介していきます。
もちろん全てを一度に実現するのは難しいため、出来そうなところから始めていきましょう。

 

1.大手ECサイトや競合との商品の差別化

戦略の1つ目は商品の差別化です。
ECサイトの市場規模がインターネット全体である以上、唯一無二のオリジナル商品を取り扱うことは難しいと言えるでしょう。
しかし、他のショップが取り扱っているものと同じような商品を売っている場合、売り手が知名度の高いブランドであるか、価格競争に勝たなければユーザーに買ってもらえる可能性は非常に低いと言えます。
そのため、ECサイトの売上をアップさせるためには何らかの方法で商品の差別化を図る必要があります。

差別化とは、取り扱う商品を誰も売ってないものに変えるということではありません。
今売っている商品に要素を付け、個性を立てることです。
あなたが取り扱っている商品にしかない要素があれば、それを求めているユーザーに知ってもらえば確実に購入してもらえるはずです。
「この商品はどう差別化すればどんなユーザーに届くか」と考えることはペルソナ(架空のショップユーザー像)の明確化にも繋がり、サイト全体の方向性を固めるのにも役立つため、積極的に行っていきましょう。

また、商品の差別化を行うことでリスティング広告の出稿も行いやすくなります。
特化された単語は検索ボリュームが小さく、その分リスティング広告のCPC(Cost Per Click;1クリックあたりの単価)も下がるためです。
競合対象のサイトも減少するため、SEO対策の効果も表れやすくなります。

 

2.ネットとリアルを融合させたオムニチャネル戦略

オムニチャネルとは、ネットとリアルを融合させあらゆるチャネル(経路)で顧客と接点を持つ戦略です。
顧客と売り場(ECサイト、実店舗)を、検索やSNS、広告や口コミなど複数のルートで繋ぐと捉えれば理解しやすい考え方です。
例えば実店舗に在庫がない商品をネットショップ経由でお届けしたり、ECサイトで注文した商品を実店舗ですぐに受け取ったりといったことを指します。

オムニチャネルを実現できれば、ユーザーは好きな時に好きな方法で商品を手に入れることが可能になるため、結果的にユーザー満足度が向上し売上アップやリピーター化に繋げることができます。

また、オムニチャネルのためには顧客と在庫の情報を一元化して管理する必要があります。
簡単なことではありませんが、これが可能になれば在庫を効率よく管理できるほか、ECの特徴であるユーザーの細かなデータを取得できる点を活かし、顧客ごとにデータに基づいた正確なニーズに沿った提案が出来るため、その点でもユーザー満足度を上げていくことが期待できます。

一方でオムニチャネルはその性質上、単一の部署や部門だけで進められるものではありません。
会社全体が一丸となって実施していく必要があり、それだけコストと労力もかかります。
またオムニチャネルが進んだ場合、ECサイトに売り上げが傾いていく点は忘れてはいけません。売上低下のために実店舗社員のモチベーションが低下したり、実店舗を閉鎖した結果チャネルが減少してしまい売上が漸減してしまったり…といったことが起こらないように意識をする必要があります。

 

3.海外に向けた越境ECの展開

ECサイトは時間と場所の制約がないという大きな特徴を持つため、海外に出店するハードルも実店舗に比べて低くなります。
国内では競合相手が多い商品でも、海外ではまだ需要が大きく、出店できれば大きな売上が見込める可能性は決して低くありません。
そのため越境ECも有効な戦略のひとつだと言えます。

ただし、海外と日本では文化が異なる点に注意が必要です。
例えば中国市場に進出する場合には以下のことを知らなければ成功できる見込みはほとんど無いでしょう。
ECモールに出店するなら、アリババグループの「天猫(T-mall)」と京東集団の「京東(ジンドン)」の2つの利用がほとんどを占めているためこのどちらかを選ぶべきです。
また自社サイトで売り出す場合は集客が大きなネックになります。
中国人ユーザーの検索エンジン「百度(バイドゥ)」にインデックスされるためにはなんと現地法人が必要になるのです。
そして、中国では近年、SNSやライブ配信を利用したインフルエンサーマーケティングが活発に行われていることなどを知らなければ、効果の薄い広告を打ち続けてしまうかもしれません。
さらにクレジットカード決済は一般的でなく、専用の決済方法を使えるようにしないと現地のユーザーに信頼してもらえず、カゴ落ちを招いてしまう可能性が高くなります。

以上のように、成功するのは決して簡単ではありません。
しかしその分ライバルとなるECサイトが少ないとも言えますので、戦略次第では先駆けとして大きな売上を獲得することができるでしょう。

 

4.アプリを展開した顧客の囲い込み

スマートフォンやタブレットの普及により、モバイル環境でインターネットを利用するユーザーの数は非常に増えています。
そのためスマートフォン用アプリを提供するのは非常に有効な手段と言えるでしょう。
アプリを使えば、アプリを通じたクーポンやポイントの配布、会員限定の商品情報の紹介、そしてPUSH通知といった要素でユーザーを囲い込めます。
特にPUSH通知はメールマガジンを確認しないユーザーの画面にも通知という形で表示させることができるため、効果的な通知文を配信できればアプリを通じた再来店が期待できます。

従来、アプリの開発には資金やノウハウが必要で、ハイコスト・ハイリターンな施策でした。
しかしアプリプラットフォーム「Yappli」の登場により、コストを抑えて簡単にアプリを開発できるようになり、ハードルが非常に下がっています。

ただ、わざわざアプリをインストールしてもらうためには、ユーザーに明確な利益があると感じさせるか、顧客からの信頼や愛着(=顧客ロイヤリティ)の高い大企業でないと難しい点もあります。
また通知があまりに多かったり、興味を惹かない内容が続いたりすると、ユーザーに鬱陶しがられ削除されてしまう可能性があるため、特に通知文や配信間隔は慎重に設定するようにしましょう。

 

5.コンテンツマーケティング

ECサイトを運用するなら絶対に行っておきたいのがSEO対策です。
ユーザーのほとんどは検索結果の1ページまでしか見ていないという調査結果が出ているため、安定した集客数の増加を見込みたいなら必要不可欠だと言えるでしょう。
特に、数あるSEO対策方法の中でも「コンテンツマーケティング」には可能であればショップの開店時から積極的に取り組むべきです。

コンテンツマーケティングとは、ユーザーにとって役立つ情報コンテンツを掲載したページを作ることで検索エンジンに有益なサイトだと判断してもらい、検索順位を上げる手法です。
コンテンツ制作を自社で行えば費用をかけずに実施できるのに、効果はリスティング広告とほとんど同じものが期待できるため非常におすすめの戦略だと言えるでしょう。
また「こんなに役立つ情報を掲載しているショップは信頼できる」といった風にユーザーに信頼を感じてもらえる可能性も高まります。
ECサイトは顧客と直接関わることがないため、ユーザーからの信頼を得るためには地道な誠意の積み重ねが必要になります。
コンテンツマーケティングには早い段階からじっくり取り組んでいきましょう。

ただ、コンテンツマーケティングには、効果が出るまでに時間がかかる上に、検索エンジンで上位表示されるコンテンツを作るのは容易ではないという点もあります。
コンテンツマーケティングを行う場合は入念な準備と勉強、そして根気が必要です。
また制作したコンテンツが実際にはユーザーからの需要が低いものだったという失敗もあり得ない話ではありません。
特に初めての場合は、自社だけの力で行うのではなく、専門的なノウハウを持ったECコンサルに相談するのも、費用こそ必要になりますが結果的には効率的な手段の一つでしょう。

 

6.マーケティングオートメーション施策の実施

「マーケティングオートメーション」とは、見込み顧客を育てるためのマーケティング施策をサポートしてくれるツールやソフトウェアを指します。
例えば「資料請求をしたユーザーにはこの順番でメルマガを送る」「カゴ落ちしてしまったユーザーに通知メールを送る」といったように、潜在顧客を育て、取りこぼしを防ぐために役立つ施策です。
リマーケティング広告もこれに含まれます。

これは導入により劇的に売り上げをアップさせるものではなく、一度はサイトを離脱した潜在顧客を呼び戻す、またはCV数が増えてきた場合等に効率よく顧客の囲い込みを行っていくのに役立つものですので、そもそもサイトへの訪問者数が少ない場合には採用の優先度が低い戦略になります。

 

7.SNSを活用したソーシャル施策

直接売り上げに繋がるものではありませんが、重要な戦略です。
SNSは拡散力が高いため、上手くバズることができてアカウントを拡散してもらえれば知名度のアップに役立ちます。
またユーザーとの距離が近いため、コミュニケーションにより顧客ロイヤリティの向上を図れるほか、製品に関する意見を送ってもらえることもあります。

ただしキャンペーンや宣伝など自社の利益となる情報だけを発信していては意味がありません。
ユーザーに「このアカウントをフォローしたい」と思わせられるような、ユーザーに有益な情報を発信する必要があります。
コンテンツマーケティングと同じ感覚で運用するのが良いでしょう。

よほどのことがない限りSNSアカウントが急速に成長することはありませんので、運用は長期を見据える必要があります。
また、炎上リスクには十分気をつけましょう。

 

EC戦略:モール型ECサイトと自社ECサイトはどちらがいいのか

ECサイトは、専用のスペースを間借りして出店する「モール型」と、独自ドメインを取得して自分のネットショップとして運営する「自社EC型」の2つに分類することができます。

こちらの項目では、モール型と自社EC型のどちらが良いのかについて解説していきます。

 

モール型ECサイトの特徴

モール型ECの代表例は楽天市場とAmazon、そしてYahoo!ショッピングです。
これらのECモールにはいくつものネットショップが集まって運営されており、百貨店やショッピングモール等に例えられています。

 

メリット

モール型ECサイトのメリットとして、まず一番に集客力の高さがあります。
特に大手のモールの場合は検索結果で既に上位に表示されており、SEO対策を行わずともユーザーの目に商品を入れることが可能になっています。
ユーザーも何かを買うときは信頼できる場所で買いたいと考えているため、積極的に大手モールにアクセスして商品を検索し、あなたの商品を見つけてくれます。

次に「AISCEAS」のプロセス全てをサイト単独で達成できる点があります。
まず「Attension」「Interest」の段階は、自社ECサイトなら集客施策を行う必要がありますが、上述の通り高い集客力によって自然と商品の存在を知らせることができます。
そして充実した検索機能による「Search」、圧倒的な商品数とレビュー量による「Comparison」「Examination」の段階達成も容易で、購入後の「Share」も手軽に行えることは言うまでもないでしょう。
このように大手ECモールは、こちらが働きかけずともECマーケティングの各段階をユーザーに踏ませてくれるのです。

まとめると、モール型ECサイトには、マーケティングに不慣れでもある程度商品が売れるチャンスがあるというメリットがあります。

 

デメリット

もちろんモール型ECサイトにもデメリットはあります。
デメリットとしてよく挙げられるのがショップや商品のブランディングが難しいという点です。
ショップページのデザインをモールのものから大きく変えることは出来ず、視覚的な差別化はほぼ不可能と言ってもいいでしょう。
またユーザーはその””ショップ””ではなく””モール””で買い物をしたと記憶するため、売上があるのにショップやブランドとしての知名度はほとんど無い…というケースも珍しくありません。

また、モール内に出店している他の多くのショップと競ってユーザーに選び取ってもらわなければならないのもモール型ならではの課題です。
商品そのものの差別化が出来なければ値下げをして勝負をするしかなくなってしまい、気づけば採算が取れなくなっていた…といったことにならないよう注意が必要でしょう。
モール型ECに出店する場合は、集客力の高さにあぐらをかかず、それを目的に出店している他のショップとどう差を付けるかといった点をしっかり考えて戦略を立てなければいけません。

 

自社ECサイトの特徴

自社ECサイトにもいくつか種類があり「ASP型」「パッケージ型」「オープンソース型」「フルスクラッチ型」などの構築方法があります。
この内「フルスクラッチ型」はゼロからサイトを構築するという性質上、非常に費用と時間がかかるため、特に初めてECサイトを作る場合にはオススメできません。

「オープンソース型」は公開されているECシステムのプログラムコードを使って制作するものです。
無料で使用できる点やカスタマイズ性の高い点が強みですが、プログラムの専門技術が必要なことと、システム障害やセキュリティ対策についても自社内でカバーしなければならないため、万が一の事態が起こった際のリスクがやや高い点がデメリットです。
オープンソース型で構築する場合のオススメは下記の通りです。

・ec-cube

多くのプラグインが公開されており、レコメンドやカード決済を実装できる。
逆に言えば、標準サポートされている機能以外は全てプラグインを導入しなければならず、制作者の違うプラグイン同士では競合が起きてしまう可能性があるため専門的な知識が要求される。

・magento

世界で最も利用されているECシステム。処理を高速化する機能を備えているため、商品の取り扱い数やアクセスが増加しても運用に支障が出ない。
主な情報源は英語なので、使いこなすのにハードルが高い。

・WordPress

プラグインと併用すればECサイトになる。元々SEO対策を行う場合に強いCMSなので、コンテンツマーケティングの効果を実感しやすい。
使用者数が多い分、フォーラムが活発な一方でサイバー攻撃の標的になりやすい面がある。

ECサイト構築のベースとなるソフトウェアを利用する「パッケージ型」は、最初から必要な機能が搭載されているためフルスクラッチ型ほど時間がかからず、ソースコードが公開されていないためオープンソース型よりセキュリティ面でも強固です。
一方でカスタマイズ無しのベース機能だけでも数百万以上の費用がかかってしまう点や、導入したシステムは時代の流れに合わせて自分でアップデートしていかなければならない点から、実装・運用ともにある程度のコストを覚悟しなければならない方法だとも言えるでしょう。
パッケージ型で導入事例が多いのは下記の3つです。

 

・ecbeing

国内シェアNo.1を誇り、あらゆる業界のECサイトに向いている。
バグや障害が非常に少ないが、パッケージは買いきりで自動更新されないためシステムの保守にコストがかかる。

 

・EC-Orange

多彩なビジネスモデルに対応しており、マルチテナントやオムニチャネル化を進めたい場合にもオススメ。
一方、構築には「ec-cube」が使われているため、ec-cubeが内包するオープンソース故のシステムの脆弱性は意識しておく必要がある。

 

・コマース21

大手ECサイトへの導入事例が多数存在しており、実績面では業界トップクラスと言える。
自由度が非常に高く、さらにソースコードが公開されているため、技術があれば構築後に自社内でメンテナンスが可能。
その分初期費用は非常に高額で、個人や中小企業での導入は現実的とは言いがたい。

ASPとは「Application Service Provider」の略称で、ネットワークを通じたアプリケーションの提供サービスを意味し、その中でもECサイト構築に特化したシステムを「ASPカートシステム」と呼んでいます。
ASPカートは、ECサイトに必要な基本機能を備えたプラットフォームをクラウド上でレンタルすることで利用します。
基本機能が初めから入っているため構築が非常に手軽で、パッケージ型のような買い切りではないためコストが非常に安価である点から導入のハードルはとても低いと言えます。

しかしカスタマイズ性は他に比べて低く、とりわけサイトデザインという面では、デフォルトから大幅にイメージを変えることはできません。
同じカートシステムを使っている競合他社との差別化には工夫を凝らす必要がありますが、初めてEC事業を立ち上げる場合は特にオススメの方法だと言えるでしょう。
ASP型では以下のシステムがよく選ばれています。

 

・BASE

初期費用と月額費用がどちらも無料なのが大きな特徴。
PC初心者でも簡単に管理できるよう、非常にシンプルな設計になっていて使いやすい。ある程度慣れている方でもHTML編集によるカスタマイズが可能になっている。
利用自体は無料で行えるが、商品が売れた時やショップの売上金を引き出す際に手数料がかかる点は覚えておくべきだろう。

 

・カラーミーショップ

安価だが初期費用・月額費用が必要になる。しかし固定費なので、長期的にショップの規模を大きくしていく見通しがあれば安定して運用できると言える。
機能は充実しており、店舗の開設や運営に必要な操作もシンプルで、手軽に導入できる点が初めての方にも向いている。
ただし、ページデザインを自分で編集しカスタマイズするためには、CSSやJavascriptの知識が必要になる。そうでなければ無料のテンプレートを利用することになるので差別化はより難しくなると言えるだろう。

 

・MakeShop

20,000を超える店舗に導入されており、実績は業界トップクラス。
搭載されている機能も多く、プレミアムプランなら専任アドバイザーによるサポートを受けることも出来る。
その分高めの月額費用がかかり、機能を持て余してしまう可能性もあるため、小~中規模なショップにはあまり向いていない。

 

メリット

自社ECのメリットとしては、何よりもブランディングに有効な点が挙げられます。
もちろん知識や制作会社への依頼費は必要になりますが、サイトデザインを自由に変更できるため、ブランドのイメージに沿ったECサイトを制作できます。
また、モールへの出店なら、商品が売れたとしても例えば「Amazonで買った」のように言われてしまう場合がほとんどですが、自社ECサイトの商品を購入した顧客はその店舗・ブランドを認識してくれます。

次に、無理に価格を下げる必要がない点があります。
モール型では他の店が同時に出店しており、かつ価格の比較も容易に行えるため、価格競争に巻き込まれてしまう可能性が高いですが、自社ECサイトならその心配もありません。

顧客データが利用しやすいのも自社ECサイトならではの強みです。
モール型の場合、入力された顧客情報はモール側が管理していますが、自社でECサイトを持っているなら顧客のデータを全て把握し活用できるため、EC戦略を立てるための分析や、CMR(顧客関係管理)システムを使ったユーザーの囲い込みが行いやすいと言えるでしょう。

 

デメリット

しかし、自社ECサイトにも以下のような欠点があります。

何よりも大きな問題は集客のしづらさです。
大手ECモールから自社ECサイトに切り替えた場合に起こりがちな失敗として、訪れるユーザー数が一気に減ってしまったというものがあります。
何故なら大手ECモールはその名前だけで大きな集客力を持つため、わざわざ広告等を打たずともユーザーが訪れて商品を目に留めてくれるからです。
しかし自社ECサイトでは一からユーザーを集客しなければなりません。

同様に、自社ECサイトではユーザーからの信頼も一から培っていく必要があります。
ユーザーは「有名なモールは信頼できる」と考えて購買行動を行っているため、自社ECサイトが同じように信頼してもらえるよう工夫しなければならない。

また、自社ECサイトを立ち上げた時点で、知名度や信頼度の高い大手ECモールも競合相手となることを頭に留めておきましょう。
ECサイトの数が増えてきている中で、自分のショップを選ぶメリットとは何かを考えて戦略を立てなければ、自社ECサイトで成功することは難しいと言えます。

 

「どちらか」ではなく「どちらも」を選ぶべき理由

ここまでモールECと自社ECサイト、それぞれの特徴とメリット・デメリットを見てきましたが『結局どちらを選べばいいのだろう』と悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、どちらか1つに絞らなければならないということはないのです。

自社ECサイトと大手モールはそれぞれに特徴があり、メリット・デメリットも異なります。
そのため、どちらか一方を選ぶのではなく、両方を併用すればそれぞれの良いところを取ることが出来るのです。
例えばモールECで蓄積した大量の顧客データを分析して自社ECサイトのマーケティングに活かす、モールECで知名度を上げて自社ECサイトに顧客を呼び込み、改めてブランディングを行うといった戦略を取ることも可能です。

また、モールへの出店にしても、楽天市場だけでなくAmazonにも出店するといった形で複数のモールに展開すればそれだけ顧客との接点を増やせて、売上アップのチャンスに繋げられます。

ただし複数のECサイトを展開すればそれだけ費用や人員が必要になることには注意をしておきましょう。

 

ECサイトの未来

近年、大手モールECは商品を購入するだけの場ではなくなってきています。
例えば、ランキング機能を使って最近売れているトレンド商品を把握したり、サイト内検索で商品間の評価や価格を比較したりといった、商品の情報を収集する場として用いられるようになってきたのです。

かつては実店舗で商品を検討した後ECサイトで購入する「ショールーミング」が行われていましたが、最近ではECモールで情報を集めた後、実店舗で実物を確認して購入する「Webルーミング」をするユーザーも増加しています。

オフラインとオンラインを結ぶ概念はかつて「O2O(Online to Offline)」、つまりオンラインでユーザーを惹きつけ、オフラインの実店舗へと誘導するものが主流でした。
しかし、更なるEC市場規模の拡大により、今後は「OMO(Online Merges with Offline)」、つまりオンラインがオフラインを併合していくという考え方がスタンダードになってくるでしょう。
オンラインとオフラインを別物だとして考えるのではなく、日常に浸透したテクノロジーによって、オフラインすらオンラインの一部になるということです。
ECマーケティングを考える際は、オンライン・オフラインという違いを意識するのではなく、顧客がその時にどう考えどんな選択肢を選ぼうとするのかに着目し、戦略を立てることを心がけましょう。

 

ECマーケティングが目指すべき場所

ECマーケティングの目的はECサイトの売上を伸ばすことです。

では、そもそも顧客がどんなプロセスを辿れば売上に繋がるのでしょうか?

商品を買ってもらうためには、まずショップに来てもらわなければいけません。そのためには「集客」が必要です。
しかしせっかくユーザーが訪れても離脱してしまっては意味がないため、集めたユーザーを「購入へ導く」必要があります。
そして、ユーザーに商品を購入してもらえばそれで無事に終わり…ではありません。
インターネット上に存在するECサイトの量は膨大で、確保したはずの顧客が他店に流れる可能性は常に存在しています。
そのため購入してくれたユーザーを囲い込んで「リピーターの確保」をしなければ売上は安定しません。
つまり
1.集客
2.購入へ導く
3.リピーターの確保
までの一貫した施策を行うのがECマーケティングだと言えます。

では、ECマーケティングで最も重要なこの3つのプロセスについて、それぞれどのような戦術を取っていけば良いのでしょうか。

 

1.集客

広告は集客の基本戦術です。
しかしコストが安く、即効性が高く、ユーザーが集まりやすい…という広告はありません。
それぞれの広告ごとの特徴を把握した上で、複数を組み合わせて運用する必要があります。

例えば、ディスプレイ広告は画像や動画でアピール出来る点、比較的安価で始められる点が強みです。
しかしリスティング広告と比べて購買意欲の高いユーザーの目に留まる可能性は低く、CVには繋がりにくい傾向にあります。
また、リスティング広告も、適切なワードを設定できれば高い効果こそ期待できますが、同時にコストも高くなるため、商品単価が非常に高額もしくは宣伝・集客に使える費用が多いかのどちらかでない限り使い続けることは現実的ではありません。

広告は重要ですが、それだけでなく、コンテンツマーケティングによるSEO対策を進めて広告がなくとも安定した集客が見込める状況を作りましょう。
SEO対策は長く時間をかけて行うものなので、なるべく早い内に始めるのがオススメです。

ユーザーをサイトに呼び込んだら、次は実際に商品を購入してもらう必要があります。

 

2.購入へ導く

集めたユーザーをできるだけ多く購入へ導くということは、つまりCVR(コンバージョン率)を上げるということです。
CVRを上げる方法は下記の記事でさらに詳しく解説していますのでぜひ併せてチェックしてみてください。
「ECサイト コンバージョン率」について、詳しくはこちら

ユーザーに商品を購入してもらうためには「商品を購入したくなるサイト」を作る必要があります。
商品を購入したくなるサイトとは、すなわち離脱してしまう要因のないサイトです。

ユーザーが離脱してしまう原因として、例えば以下のものが挙げられます。

・ECサイト側の「売りたい!」という気持ちが強く出過ぎている
・サイトのページ構成や商品情報が分かりにくい
・商品を使ったユーザーの口コミやレビューが無く、商品が信頼できない

これらの感情を解決するようなECサイトに改善していけば、自然とCVRは伸びていくはずです。
離脱してしまう原因はサイトごとに異なりますが、解析ツールを使えばユーザーがどのページで離脱してしまっているのかを確認できるため、改善点を把握するのに役立ちます。

では、実際に商品を購入してくれた顧客をリピーターにするためにはどうすれば良いのでしょうか。

 

3.リピーターの確保

実は「EC売上の8割はリピーターによるもの」と言われることもあるほど、リピーターはECサイトにおいて重要な存在です。
リピーターになってもらうためには、もう一度この店で買い物をしたいと思う動機づけが必要です。

動機となる要素の1つが「お得感」です。
例えば、購入時に商品を割引できるクーポンやポイントがセットで付与されれば「お得なのでもう一度この店で買い物をしよう」とユーザーに感じさせることができます。
また、付与されたポイントをそのまま忘れてしまうのを防ぐために、一度商品を購入した顧客にメールでレコメンドを行ったり、新商品の情報を送ったりするといった方法もユーザーの定着に役立ちます。

また「信頼感」、いわゆる顧客ロイヤリティも重要なポイントです。
ECは非対面で売買が進み、従来の接客を行うことが出来ないため、その分実店舗よりもきめ細やかなユーザーサポートが必要となります。
問い合わせにすぐ返信する、クレームにも丁寧に対応するといった点を心がければ、ユーザーからの信頼を得ていくことが出来ます。
また、戦略として挙げていたSNSアカウントの運用やコンテンツマーケティングもこの場面で活きてくるでしょう。

「自分はどんな店の常連になりたいか」という観点で施策を考えれば、ユーザーの心情に寄り添ったマーケティング指針が立てられるはずです。

 

まとめ

ここまでECならではのマーケティング手法と戦略の立て方について紹介してきました。
広告の出し方やSEO対策については専門的な知識が必要にはなりますが、それを除けば、ECマーケティングの基本は「ユーザーの気持ちに寄り添う」ことです。
ユーザーはどんな商品を買いたいのか、どんなサイトで買い物をしたいと思うのかといったことを常に忘れずにいれば、ユーザーにとって魅力的なECサイトを作り上げていくことが出来るでしょう。

 

 

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