コロナ禍で注目された食品ECですが、EC化率を見てみるとまだまだ低いのが現状です。
食品の性質上避けられない要因がいくつかあるのですが、今回は食品ECの市場規模やEC化率の現状と今後の課題を、成功事例や売上ランキングも含めて考察していきたいと思いますので、食品を取り扱っているEC事業者の参考となれば幸いです。
目次
食品ECと新型コロナウイルス
日常に欠かせない食品の買い出しですが、現在オンラインにシフトしてきています。
現在EC業界は全体的に成長していますが、主に食品を取り扱うECでは2020年に突入してから、大変注目を集めています。
相性が悪いと言われている食品販売のEC分野、その背景には、やはり新型コロナウイルスの影響があります。
「感染対策がされていても対面での購入は怖い」という消費者の声は、直接口に入る食品販売ではなおさら大きかったでしょう。
そこで、「巣ごもり消費」にうってつけだったのが食品ECであり、そんな消費者のニーズが、食品EC業界への注目として顕著に現れたといえます。
食品EC市場の規模
食品ECについては2018年で1兆6919億円(昨年比8.60%) 、2019年で1兆8233億円(昨年比7.77%)であり、十分に需要の大きい市場であると言えます。
食品販売業界のEC化率
経済産業省によれば2020年7月時点での、日本のBtoC食品販売のEC化率は2.89%で、これは日本全体のBtoCでのEC化率である6.76%と比べてみると、とても低いことがおわかりいただけると思います。
EC化率が低いことは、EC業界における今後の課題でもありますが、同時に新規開拓の魅力が大きい市場であるとも言えます。
食品とECの相性が悪いとされる要因
生鮮食品の取り扱いが難しい
食品といえば、肉・魚・野菜など生ものが多いイメージで、実際生鮮食品の販売において、何よりも重要なのは「鮮度」ですが、この鮮度がECサイト運用にとってはいくらか厄介です。
やはり生鮮食品の保管の難しさでしょう。
冷蔵や冷凍の設備は大規模なものが多く、自社内での設備投資をした場合でも、アウトソーシングをした場合でも、他の業界に比べて費用がかかりがちです。
また、コストをかけて在庫としての食品の鮮度を保てるようになっても「全国各地に配送する」段階がまだ残っています。
食品に特化した大きな物流拠点が必要になってきます。
さらにECが食品販売との相性が悪いとされる大きな要因として、「手に取って鮮度が確認できない」という点があり、鮮度が重視される商品では、消費者が自身で手にとって状態を確認することができるということが、購買決定への重要なステップとなります。
スーパーマーケットやコンビニエンスストアでは当然これができますが、ECではそうはいきません。
生鮮食品は、この観点から見るとECとの相性が悪いと言えるでしょう。
食品販売における利益率が低い
食品EC販売は、単価が安いことと保存があまりきかないこともあり、バックエンド作業でのコストを考えると、あまり利益率がいいとは言えません。
ECのバックエンドでは、在庫管理やピッキング、検品、配送など多くの工数が掛かっています。
生鮮食品であれば、鮮度を保つための冷蔵設備も必須になるでしょう。かかる配送コストに対して、食品の販売単価が低いからこそ、食品販売企業はECに進出する機会を見送ってしまいます。
実店舗で事足りる
スーパーマーケットやコンビニエンスストアは、衣料品店や家電量販店よりも店舗数が多く、消費者もそれぞれにとって立地の良い店舗を選ぶことができてしまうため、ECサイトの強みである、「どこでも・いつでも」購入できるという点が、実店舗の利便性の高さによりかすんでしまうのです。
さらに食品の鮮度や状態も、消費者自身で選んで購入することができるのです。
また、ECサイトでは、購入品に送料がかかりますが、実店舗ならば必要ありません。
配送料がユーザーの大きな負担になる
近年、佐川や日本郵便各社、ヤマトが値上げに踏み切った影響で、今まで配送料無料だったサービスが廃止になっており、たくさん食品を買わなければ、配送料がかかってししまうので、結果ECサイトではなく実店舗で食品を買ってしまいます。
食品をECサイトで取り扱うメリット
日常生活がより便利になる
ECサイトで日々の生活での食材を調達することができれば、お店に行って歩いて帰ってくる時間の分を節約することができますし、家で待っていれば購入品がドアの前まで届くのですから、運ばなくてもいいのです。
行って帰って運んでが家にいるだけで済むので、高齢者や主婦の味方ということができるでしょう。
また、検索で欲しい商品を素早くカートに入れることができるため、冷蔵庫の中身と照らし合わせながらの買い物もできるので、お金の節約にもつながります。
悪天候や道の込み具合に影響されない点も魅力の一つといえるでしょう。
感染リスクを気にする必要がない
一時期は、多くのお店で入場規制がかかっていたりと、狭い店内にお客さんがたくさん、という状況でしたが、ECであれば店内のお客さんとも、販売員とも接触はありませんし、外出も控えられるので安心です。
さらに置き配設定などを活用し届いた荷物も消毒することができます。
在庫切れが起きない
ECであれば、在庫を各ECサイトで探すことも可能ですし、労力はクリックだけなので圧倒的に便利でしょう。
遠くのものや、ちょっといいものを気軽に取り寄せられる
ECならば住居地域に関わらず、出品されているほぼ全ての食品が購入可能で、選ぶのも楽しいという面も食品ECの強みです。
地域性が強く、手に入りにくいものは生鮮食品であっても、食品ECで成功しています。
「食品販売店の応援・支援購入をしたいから」という理由でのEC経由の購入も、このコロナ禍で増えてきています。
食品ECを運営する際のポイント
物流業務を円滑にする
重いものや、大きいもののように手で持ち帰りたくないものを配達できるシステムを構築するなど、食品業界は弱点がたくさんあるからこそ、物流の面で、ユーザーに食品ECを利用しようと思わせられるような取り組みが必要です。
自社に物流ノウハウがない場合は、物流システムを導入したり、物流業務をアウトソーシングすることをおすすめします。
顧客のリピート率を高める
全ての業界に言えることですが、顧客のリピート率を高めることは食品EC業界においても重要です。
食品ECで導入しやすい定期購入やサブスクリプションサービスを導入して、安定的な売り上げにつなげます。
リピート率を高めるには、マーケティングオートメーションを活用したメルマガ配信や、キャンペーンの実施、会員特典などが挙げられます。
信頼感や知名度を上げる
ECサイトは実店舗と異なり、実際の商品を見ることができません。
そのため、この企業なら、実際の商品を見なくても購入して大丈夫と思ってもらえるような企業の信頼感や知名度が重要ですが、知名度や信頼感を一気に上げることは難しいので、地道な企業努力が必要と言えそうです。
まとめ
食品EC業界は運用が難しい反面、克服すれば他社にはない強みになります。
既に多種多様なビジネスモデルが生まれていますし、今後も増えていくでしょう。
これから食品ECに取り組む方の参考になれば幸いです。