現在、ECの新たなトレンドとして顧客行動や顧客体験を重視した販売戦略「OMO」が注目されていますが、OMOとはどういった意味なのか、わからないという方も多いと思われますので、今回は、OMOとはどのようなものか、その基礎知識やメリット・デメリットを中心にまとめました。
OMOとは
OMOとは「Online Merges with Offline」の頭文字を取った略語で、日本語では「オンラインとオフラインを1つに混ぜ合わせる」となります。
「インターネット(=オンライン)とリアル世界(=オフライン)を区別することなく融合させ、どんな環境においても同じようにサービスを展開し、顧客に価値のある購入体験を提供する」マーケティング戦略を意味します。
従来のマーケティングにおいては、実店舗でできるサービスとネットショップなどのサービスでは、サービス内容は異なっていました。
ところがスマートフォンが当たり前となった現代社会においては、実店舗とネットショップの境目は曖昧になりつつあります。
そのため、オンライン・オフラインの区別を感じることなく商品やサービスを購入してもらうのはもちろんのこと、購入するまでの経験を体験してもらう「OMO」という考え方が必要となった次第です。
OMOが注目され日本企業でも普及してきている理由
購入者の価値観の変化
現代社会では商品は購入できて当たり前なため、購入者は商品そのものよりも、購入する前や後の使い勝手や購入時の体験を重視するようになっています。
この、購入者が体験する一連の経験を「CX(カスタマーエクスペリエンス)」といい、CXが高い企業の商品には、固定客がたくさんついています。
そのため企業は自社のファンを作るために、CXを向上させることに重きをおいているOMOに注目しているのです。
スマートフォンの普及
総務省の令和2年通信利用動向調査報告書(世帯編)によれば、スマートフォンの普及率は86.8%となっており、実に8割以上の人が常にオンラインに触れています。
こういったオンライン環境の普及により、オフラインとオンラインを融合したOMOが可能となり、注目されるようになったといえます。
OMOは特に中国で導入が進んでいる
中国では、スマートフォンの普及率は日本よりもさらに高く、特に都市部においては100%近い普及率ともいわれています。
また偽札防止の観点から、スマートフォンによるキャッシュレス決済も日本よりも当たり前のように利用されていますので、オフラインにおける買い物も普段の食事や旅行などの情報も決済IDに紐付けされたデータとして蓄積されており、アリババのように他の国と比べてOMOを導入している企業も多いのです。
オムニチャネルやO2O、マルチチャネルなどとの違いは
オムニチャネルやO2O、マルチチャネルなどとの違いは
オンラインを活用するマーケティング用語として、よく似た言葉の「O2O」「オムニチャネル」「マルチチャネル」といったものもよく耳にしますが、これらの違いは下記の通りです。
OMOは特に中国で導入が進んでいる
O2Oとは「Online to Offline」の略で意味は「オンラインからオフラインへ」、つまり実店舗で使える割引クーポンをWebサイトで配布したり、メールマガジンや専用アプリで会員登録をすると、実店舗でも何らかの特典が得られたりするといった手法のように、インターネットのオンラインの世界からオフラインである実店舗へと誘導する、一種の販売推進施策を指します。
O2Oはオフラインの実店舗へ送客する仕組みであるのに対し、OMOはオフラインとオンラインを融合させる仕組みです。
オムニチャネルとは
オムニチャネルとは「あらゆる販売経路」という意味です。
実店舗でもECサイトでも、お客さまにとって購入チャネル(購入場所)の違いを意識せず利用できる仕組みを指します。
OMOと似たような仕組みですが、OMOは、オンラインとオフラインが融合していることを前提とした上で、製品やサービスにおいてより良い体験をしてもらう、CX を高めることに重きをおいているという特徴があります。
そのため、シームレスな買い物ができるオムニチャネルという仕組みをベースに使って、より顧客満足度を上げようとすることがOMOといえるでしょう。
マルチチャネル・クロスチャネルとは
マルチチャネルとは、その商品を購入できる接点を複数持つことです。
直販店のほか、ECサイトでの販売、百貨店などの他店でも購入可能など、お客さまとの購入接点が複数ある状態を指します。
マルチチャネルは、購入接点が複数あるというだけで、それぞれの購入チャネルにおいてデータ連携化されているわけではありません。
つまりネットショップのポイントが実店舗では使えないなど、それぞれのチャネルは独立してしまっています。
そこで、顧客情報や在庫データなどを連携させるクロスチャネルという仕組みがあります。
ですが、クロスチャネルは各チャネルのデータを連携するのみなので、オムニチャネルのようにネット購入して実店舗で受け取る、といったことはできません。
OMOやオムニチャネルは、どの販売チャネルを利用しても同じサービスを受けられますが、マルチチャネルやクロスチャネルではあくまで、さまざまなチャネルで購入できる、ということにとどまります。
OMOのメリット
購入チャネルが多様化することで購入機会のアップにつながります。
ユーザーは場所や時間による制約を受けず購入ができますので、販売機会の損失を最小限に抑えることができますが、OMOの真のメリットは「顧客の行動データを解析することで得られる真のニーズを得ること」にあります。
いくら販売チャネルを増やしても、お客さまのニーズがわからなければ購入という行動を得ることはできません。
デジタルデータやIoTを一元化し分析することで「お客さまが本当に欲しかったもの」を具体化して提案することができます。
この情報を元に、実店舗やECサイトをバージョンアップさせていくことで、CXの向上につながり、それが売上をアップさせるという循環が生まれていくのです。
OMOのデメリット
OMOを取り入れてもすぐには収益に直結しない点が挙げられます。
データの一元化や分析、ユーザーが満足するような購入体験を提供するための仕組みは、人材面でも金銭面でもコストがかかりますが、すぐに売上に反映されることは期待しないほうがいいでしょう。
もともとOMOという施策は「顧客体験(CX)の向上」を目的としており、お客さまに自社のファンになってもらうことが最終目標です。
そのため、短期的な収益を求めるのではなく、長期的な目標を持ってOMO施策に取り組む必要があることを周囲にも認知して貰う必要があることを理解しましょう。
まとめ
OMOとは「オンライン・オフラインを区別することなく、商品購入やサービス体験をしてもらうことで、顧客体験を向上させる」施策のことです。
これまでは商品自体にしか価値がないととらえられていましたが、スマートフォンが流通した現在は消費者も価値観が変化し、購入する前から完了するまでの一連の購入体験にも重きが置かれ始めています。
人材面や金銭面でコストはかかるかもしれませんが、将来的に自社のファンを増やすために、メリット・デメリットを把握した上でぜひOMOの導入を検討してみましょう。