現在、ECサイトを運営されている方や、これからECサイトの立ち上げを検討されている方の中には、EC人材を直接採用して内製にするか、または運営代行会社やフリーランスに外注するかで迷われている方も多いのではないでしょうか。
今回はECサイトの運営を内製する際のメリットとデメリットについて詳しくまとめましたので是非参考になさってください。
目次
ECの内製とは
内製とは、企業が自社内で業務を完了させることを指します。インハウス化とも言われ、ECサイトに限らず、特定の業務を外部委託せずに自社内で完了させることを意味します。
内製で多くの業務を行うことができれば、コストの削減が可能になり、コミュニケーションの円滑化も図れるため、事業運営に必要な業務を自社で完結させることに注力している企業は少なくありません。
外注とは
外注とは、必要な業務の一部または全体を外部の専門業者に依頼することを指します。
自社のリソースが不足している場合や、特定の業務に必要な専門知識やスキルが社内にない場合に、外注が選ばれることがあります。
外注を利用することで、一定のランニングコストは発生しますが、業務の進行が迅速化し、専門家からのアドバイスや提案を受けながら進められるため、最終的には生産性や効率の向上に繋がる可能性があります。
EC運営を内製するメリット
EC人材を採用してサイト運営を内製するメリットについて詳しく解説します。
ノウハウが自社に蓄積する
ECサイト運営を内製化することで、ノウハウが自社内に蓄積されます。日々の業務を通じて得られる改善点や課題を詳細に記録し、それをデータベース化することで、これらの情報が自社の貴重な資産となり、活用できるようになります。
また、社内にノウハウが蓄積されることで、担当スタッフが退職した際にも、その知識を新しいスタッフへ効果的に引き継ぐことができ、スムーズにサイト運営を継続することが可能になります。
機密事項の漏洩リスクが低い
EC人材を採用してサイト運営を内製化することで、機密事項の漏洩リスクを抑えることが可能です。
その理由は、自社スタッフが雇用時に機密保持契約を結んでおり、この契約には通常、機密情報の取り扱いに関する重要な条項が含まれているためです。
ECサイト運営では、日々多様な業務が発生し、社外秘のデータやクライアントの個人情報を取り扱うことが多くあります。
内製化することで、これらの情報を社内で一元管理でき、情報保護の強化に繋がります。
ただし、機密情報を確実に保護するためには、社内規定をしっかりと整備し、スタッフに対して機密情報の取り扱い方法や漏洩リスクに関する教育を徹底することが不可欠です。
業務スピードが向上する
ECサイトの運営を内製化することにより、業務スピードが向上します。
これは、社内でのコミュニケーションがスムーズになるためです。
外注の場合、外部のスタッフとのコミュニケーションが必要になりますが、これには物理的な距離が関わってきます。
その結果、オンラインミーティングやチャットを利用する機会が増え、意思疎通が困難になりがちです。
内製化により、社内でのコミュニケーションが直接的かつ頻繁に行えるため、認識の相違が少なくなり、迅速な業務実行が可能になります。
このように、内製化はコミュニケーションの効率を高め、業務スピードの向上に直結します。
コスト削減の可能性がある
EC人材を新たに採用する場合、必ず一定の採用コストが発生します。しかし、中長期的な視点で考えると、コスト削減が可能です。
ECサイトの運営を外注する場合は、期間に応じて数百万円の費用が発生することもあり、契約を継続する限り毎月定額の支払いが必要です。
一方、内製化を選択すれば、採用と研修の初期コストのみで済み、長期的にはコストパフォーマンスが向上する可能性があります。
ただし、EC人材の採用には、給与やボーナスなどの定期的な人件費も考慮する必要があります。
臨機応変な対応ができる
ECサイトの運営では、迅速な対応が不可欠です。なぜなら、ECサイトでは日常的に様々な業務が行われ、エラーやトラブルの発生も珍しくないからです。
このような状況に臨機応変かつ迅速に対応できない場合、ユーザーからの信頼を失い、ネガティブな印象を与えかねません。
内製化によって、情報の共有が容易になり、エラーやトラブルが発生しても迅速に対応することが可能になります。
このアプローチは、サイトの運営効率を高め、ユーザー満足度を維持する上で重要です。
EC運営を内製するデメリット
次に、EC人材を採用してサイト運営を内製化する際のデメリットについて詳しく解説します。
優秀なEC人材を見つけにくい
ECサイト運営を内製化する場合、適切な担当者を配置する必要があります。自社にECサイト運営の経験とスキルを持つ人材がいれば、その人を担当者として配置するのが理想です。しかし、適切なスタッフが不在の場合は、新たに人材を採用する必要が生じます。
近年のEC市場の急成長により、業界全体で人手不足が問題となっています。多くの企業がEC人材の採用に苦労しており、一部は内製化を断念し、外部パートナーの利用を選んでいます。
EC人材が不足する主な理由は以下の通りです。
- EC市場の需要の急増によるもの
- 職種としての認知度がまだ低いこと
- 必要とされるスキルの多さと業務量
- 定着率の低さと高い離職率
- 有能なECスキル保持者が転職市場に少ないこと
これらの要因から、優秀なEC人材を確保することが難しい状況にあります。
採用・育成が急務になる
ECサイトのリリースがまだ先の場合、採用や育成にある程度の余裕を持てます。しかし、すぐにECサイトの運営を開始したい、または既に運営中の場合は、迅速に人材の採用と育成が必要となります。
先にも述べた通り、EC人材の採用は難易度が高く、適切な人材を見つけたとしても育成には時間が必要です。
このため、必要なスピードでECサイトの運営を行うことが難しくなる場合があります。
採用コストと教育コストが必要
内製化によるメリットの項でも述べましたが、EC人材を採用しサイト運営を内製化することで、中長期的にはコストを抑えることが可能になります。ただし、採用や教育の初期段階では必然的にコストが発生しますので、これには注意が必要です。
社内研修や外部講師を呼んでの講習に伴う金銭的な費用だけでなく、時間の投資も必要になります。これにより、自社の負担が増大する可能性があります。
最初からスムーズにいくとは限らない
EC人材を採用し、教育を完了しても、最初からECサイトの運営がスムーズに行くとは限りません。
初期段階では、トラブルが発生することや効率が低下することが一般的です。
そのため、「採用と教育を終えたら自社のECサイト運営がすぐにスムーズになる」という期待を持つことは、実際の効果に対する期待を誤る原因となり得ますので、注意が必要です。
業務負担が大きくなる場合がある
ECサイトの運営を内製化することで、コスト削減や業務効率の向上が見込まれます。
しかし、すべての業務を自社で行うため、従業員の負担が増加する可能性が高まります。その結果、従業員の離職率が上昇したり、職場の不満が増えることが考えられるため、業務量を適切に管理することが重要です。
さらに、業務の負荷が増えることで、他の重要な業務に支障をきたす恐れもあります。このような影響が会社全体の売上に悪影響を与える可能性もあるため、業務のバランスを十分に考慮する必要があります。
属人化のリスクがある
ECサイト運営を内製化する際は、責任者を定め、その下に複数のチームメンバーを配置するのが一般的です。この体制では、業務が特定の責任者やスタッフに依存しやすく、担当者が変わると業務の進行が滞ることがあります。
このような問題を防ぐためには、マニュアルを充実させることが重要です。
これにより、どのスタッフが責任者や担当者になっても、一貫して業務を進めることができるようになります。
コスト意識が低くなる可能性がある
ECサイト運営を外部に委託すると、外注費として具体的な費用が明確になり、スタッフのコスト意識を高めることができます。
一方、内製化の場合、コストの把握が難しくなり、スタッフ全体のコスト意識が低下する恐れがあります。経営陣は通常、コスト管理に敏感ですが、現場スタッフはこの意識が薄れがちです。
したがって、限られた予算内で効率的に運営を行うためには、事前にコスト管理と周知の方法を明確に決定しておく必要があります。
設備投資が必要になる
内製化には、人材の採用や教育だけでなく、設備投資も必要です。
- パソコン
- オフィス家具
- 各種ソフトウェア
- その他備品
これらの設備には費用が発生するため、全体的なコスト管理を徹底することが重要です。
まとめ
ECサイト運営では、日々多くの業務が発生し、それぞれに専門的な知識やスキルが求められます。
このような状況下で常に課題となるのが、「内製化するか、外注するか」の選択です。
内製化することで、中長期的にコストパフォーマンスを向上させることが可能ですが、必要な人材を確保できない場合、効率的な運営が難しくなることもあります。
業務の特性やコスト、管理のしやすさなどを総合的に考慮し、企業の目標や保有するリソースに最も適した形を選ぶことが重要です。