今後のEC市場がどのような市場になるのかを予測する際、EC化率の現状や予測を欠かすことはできません。
これは国内の動向だけではなく、海外の状況についても把握しておくことも重要になります。
今回は国内のEC市場や物販系ECにおける分野別のEC化率について解説します。
目次
EC化率とは
EC化率とは、電話・FAX・メール・対面等も含めた全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する EC 市場規模の割合で、まとめれば「すべての商取引におけるECの市場規模が占める割合」です。
算出方法は下記のように割り出されます。
EC化率 = (ECの総額 ÷ 全商取引の総額)
この計算によって市場ごとにECがどのくらい利用されているかが明らかになります。
- EC化率が高い = ECの活用が進んでいる
- EC化率が低い = 実店舗の売買が主流である
このように動向が明らかになるため、EC化率を知ることで市場の実態や傾向が把握できるようになるといえます。
国内EC市場全体の市場規模
2021年度の国内BtoC-EC市場規模における物販、サービス分野、デジタル分野の合計は20兆6,950 億円で、対前年比で 11兆 4,171 億円(107%)の増加です。
市場規模は、2020年が19.3兆円・2021年は19.4兆円と前年比7.35%増と年々拡大しています。
物販系ECが市場全体の64.2%占めており、旅行の予約を代表するサービス分野はコロナの影響で大きく減少しています。
BtoCのEC市場規模とEC化率の現状
BtoC(物販EC)のEC市場規模・EC化率は、毎年伸び続けています。
毎年右上がり状態で伸びていますが、特に2020年では前年比で1.32ポイント、2021年で0.7ポイントも増えて急激に成長しました。
この急激な成長の要因は、2020年に新型コロナによる影響で、ECの利用者が急増したことで、この影響は2021、2022年も続いていることから、市場規模やEC化率は高い伸長率を維持していると考えられます。
物販ECにおける分野別の市場規模とEC化率の現状
物販ECにおける伸長率が高い分野は以下です。
- 生活家電、AV機器、PC・周辺機器等
- 書籍、映像・音楽ソフト
- 生活雑貨、家具、インテリア
Amazon・楽天などのモール、ヨドバシカメラ・ビックカメラなどの大手小売りが、以前からサービス強化を進めており、ユーザーにとっても利便性が高かった分野であることも要因と言えます。
EC化率が遅れている「食品」も急成長を遂げており、まだまだEC化率が低い生鮮食品も含めると大きな市場になりますので、今後注目されるでしょう。
商品のブランド強化・在庫や配送の改善など、Web・SNSを活用したマーケティングとデジタル化による業務効率の改善も後押しとなるはずです。
EC市場で主要な分野別のEC化率の傾向
EC市場で主要な分野のEC化率は、2020年からさらに伸びています。
アパレルの市場規模とEC化率
アパレル全体の市場規模が毎年衰退している反面、EC市場では成長し続けています。
これはアパレル自体がECと相性が良く、全国どこにいてもお目当てのブランド品を購入することができるだけでなく、ECサイトと在庫が連携ができるツールも増えて、参入コストが安くなり業務効率化も進んだ結果と言えます。
家電の市場規模とEC化率
家電のオフライン市場規模の推移は、2013年から2018年まではほぼ横ばいで、2018年から2020年は若干の減少傾向ですが、家電のEC市場においては毎年成長し続け、EC化率も他の分野と比較して高い傾向にあります。
家電のEC化率が大きな理由は、「型番」で購入できることであり、型番が同じであればどこで買っても商品の性能・品質が変わらない家電は、型番検索や価格比較機能が充実しているECと非常に相性が良いと言えます。
家電は高価格帯の商品も多く、さまざまな商品や店舗を簡単に比較し、検討できるというECの特徴は、ユーザーの利便性を大きく向上します。
家具・インテリア・生活雑貨の市場規模とEC化率
家具・インテリア・生活雑貨のEC市場規模、EC化率も成長し続けています。
トイレットペーパー・洗剤などの消耗品の支出が大きく伸びており、家具類はテレワークの定着化によって机や椅子の購入が増えたと考えられます。
食品の市場規模とEC化率
食品のEC化率は3.77%と低いですが、ECの市場規模は2.51兆円と他分野と比較して大きく、右肩上がりで成長しています。
食品市場は、物販系の他分野と比べてEC化が進んでいません。
物販系のEC化率の平均値が8.78%です。
伸長率が高いペースではありませんが、市場規模が最も大きい分野につき今後は大きく成長する市場に間違いないでしょう。
世界のEC市場規模とEC化率の推移
日本のBtoC市場のEC化率は8.78%に対して、世界のEC化率は19.6%と2倍以上を誇っています。
なぜ日本のEC化率は世界の水準より低いのか?
日本のEC化率が低い理由は、中国とアメリカの市場規模が世界の 71.1%のシェアとなっており、EC化率の水準を大きく上げているからです。
また世界のEC化率が日本より高い理由は、中国が圧倒的に高い市場規模・EC化率となっていることです。
世界で最もGDPが大きいIT先進国のアメリカのEC化率は13%ですが、世界のEC化率である19.6%よりも低い水準です。言い換えると、世界のEC化率の水準を超えている国はEC市場の上位では中国・韓国ぐらいと推察できます。
このように踏まえると、日本だけEC化が低いわけではないため、EC化率だけで日本のEC化が遅れているとは判断するのは早計かもしれません。
アメリカ・中国のEC事情
中国と米国ではEC市場が大きいことには下記のような理由があります。
- GDPが大きい。アメリカと中国だけで世界のGDPの約41%を占める*。
- 人口が多く国土が広いため。店頭に行くまでに時間がかかる
- 小売店がEC化を推進。大きなECプラットフォームも存在する。
などが挙げられます。
EC化率と今後のEC市場の見通し
国内において、ECの市場規模やEC化率は右肩上がりで成長していくことが予想され、ビジネスチャンスも広がる見込みです。
課題である物流については、ドローン・置き配・個人の参入など、新たな取り組みが始まっています。
物流の課題が解決されていくことで、配送コストが下がり、さらにECが身近な存在になっていくでしょうが、反面楽観視できない側面もあります。顧客の争奪戦が激しくなり、コスト増大から利益率に影響が出てくる可能性があります。
EC市場は拡大しても、今後もいかに効率的に顧客を集めるかが重要な課題となりそうです。
まとめ
日本のEC化率は世界の中では決して遅れているわけではなく、むしろEC市場・EC化率は年々増加傾向にあり、これからさらに伸びると予測されています。
ただ国内ではAmazon・楽天といったモールも直販を開始したり、競合他社も増えていくことを考えるとEC市場への新規参入は簡単ではありませんが、EC市場が拡大していく中で、これまで接点がなかった顧客にアプローチできる機会が増えるため、販路拡大のチャンスとも言えますので、EC化率を見直してみましょう。