今回ゲスト、株式会社ユーチル 竹澤 秀明 氏は、日本全国の作家や窯元の器を販売。自社ECだけでなく、モールや越境ECなども展開。2018年より「うちるWEB陶器市」を開催する。カラーミーショップ「部門賞」、「優秀賞」受賞されていらっしゃいます。
竹澤氏に『伝統工芸EC』についてお話をお伺いしました!
▽ 楽天市場出店に踏み切った背景と、その狙いを教えてください。
自社ECは順調に成長していましたが、「この市場だけを磨き続けても、いずれ伸びきるのではないか」という危機感がありました。食器産業全体の市場規模は、バブル期と比べて半分以下まで縮小しています。その中でオンライン化率は約10%。さらに独自ECの比率を考えると、実質的な市場規模は10億円にも満たない状況です。この環境下で、改善を積み重ねるだけでは限界があると感じたことが、モール出店を検討するきっかけでした。楽天市場への出店は約2年前です。当店の在庫構成は、作家ものが「1」に対して、窯元やメーカー寄りの商品が「2」という比率で、後者は流通量も多く、一定量を安定して供給できる商品群がありました。一方で、作家さんの中には「楽天での販売は避けたい」という方も少なくありません。また、既存のお客様に「楽天のほうがポイントがついてお得」という印象を与えてしまうことにも抵抗がありました。そこで楽天店は姉妹店として位置づけ、価格も自社ECよりやや高めに設定しています。一番品揃えが豊富で、お得なのは自社サイトであり、「ここだけ見ていれば大丈夫」というメッセージを、あえて言葉にして伝えてきました。
正直に言うと、自社ECでうまくいっているやり方をそのまま持ち込めば、楽天でも通用するだろうという甘い見通しがありました。しかし結果はまったく違いました。楽天では単価の安い型番商品が強く、和食器のように一点一点表情が異なる商品は、検索で辿り着いてもらいにくいのです。自社ECでは「店全体の世界観」で選ばれていた商品も、モールでは「商品単体」で勝負しなければなりませんでした。転機となったのが、北欧ブランドの取り扱いです。検索ボリュームの大きい型番商品をフックに、楽天店は北欧ブランド中心、自社ECは和食器と作家もの中心と、役割を明確に分けていきました。その結果、自社ECは世界観や編集力で売る店、楽天店は型番商品を起点に新規顧客と出会う店という、2店舗体制ができあがりました。
▽ 越境ECを始めた理由と、今後の展望について教えてください。
モール事業と並行して、会社全体のポートフォリオを考える中で、海外展開も視野に入れました。伝統工芸や和食器は、海外から見ると同じ価格でも割安に感じられる可能性があります。実際、自社サイトでは中国のお客様が転送サービスを使って購入してくださっていましたし、台湾にも日本文化や器を好む方が多いことは分かっていました。ただし、台湾は市場規模や所得水準に加え、日本国内にすでに良い競合店がある点を踏まえ、今回は見送りました。中国についても、検閲の問題や購入後のやり取りの難しさから、現実的ではないと判断しています。一方でアメリカは、アクセス数は少ないものの、コンバージョン率と単価が高く、日本文化への理解があり、和食器をカルチャーとして楽しむ層が、特定の地域に存在していました。約1年かけて市場調査を行い、サブドメインでの海外販売も試しましたが、広告運用のしづらさや、日本向け施策が混在してしまう課題が見えてきました。そこで海外向け専用サイトを立ち上げ、英語圏、特にアメリカにフォーカスする形へ切り替えました。立ち上げ後、売上は月商100万円規模まで成長しましたが、その後アメリカでデミニミス課税が導入され、コンバージョン率は一時的に半減しました。それでも販売自体は止まっていません。現在はSEOとGoogle広告を軸に、アメリカ向けに最適化した運用を続けています。単なる翻訳ではなく、現地の検索意図や感覚に合わせた調整が必要だと痛感しました。英語の先生に「高く感じるか」「どこが魅力的か」を直接聞くなど、地道に理解を深めています。最終的には、モール事業や海外事業に挑戦しつつ、本丸である自社ECも、まだまだ伸ばせると感じています。今後は器だけでなく、キッチンツールや布ものなど、「キッチンを豊かにするもの」へ広げていきたいです。人は必ずしも機能だけで物を選ぶわけではありません。特に食器やキッチン周りは、情緒的な価値で選ばれる分野です。「この店で買うと、キッチンが楽しくなる」。そんな体験を提供できる店を目指し、これからも一つずつ積み上げていきたいと思っています。
~第336回 ゲスト~
竹澤 秀明 氏
株式会社ユーチル
取締役
2012年に和食器の通販サイト「うちる」を創業。日本全国の作家や窯元の器を販売。現在は、自社ECだけでなく、モールや越境ECなども展開。2018年より「うちるWEB陶器市」を開催するなどユニークな試みを行う。カラーミーショップ大賞にて2017年「部門賞」、2022年「優秀賞」受賞。2025年「第17回 全国ネットショップグランプリ特別賞(ネットショップ担当者フォーラム賞)」受賞。
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