広告費ゼロ?消えかけた伝統工芸がネットで復活した理由【SEO・EC・ネットショップ】

EC戦略・マネージメント編

今回ゲスト、石膏像ドットコム 脇本 壮二 氏は、2010年にEC直販サイト「石膏像ドットコム」をスタート。「石膏像図鑑」を自費出版。これまでに約800冊を販売。2018年カラーミーショップ大賞・ベスト店長賞受賞されていらっしゃいます。

脇本氏に『伝統工芸品のEC販売』についてお話をお伺いしました!

▽ 石膏工房がECをはじめるまで
石膏像ドットコムを一人で運営しています、石膏像を作る職人です。祖父の代から続いて3代目で、今年で75年目の歴史になります。ECが中心になりましたが、販売、梱包、発送、ECの運営まで含めて全部1人でやっています。ECは2010年から始めて、今15年目です。祖父が創業したのは1950年で、当時高度成長期で学校の数も増えましたし、石膏造の必要な量もどんどん増えて生産量も増えました。父が参加して、画材店の取り扱いもどんどん増えましたが、バブル景気の1990年代の前半に入ると、徐々にその陰りが見えて、少子化も意識されてきて、特に都心では小中学校の統廃合がどんどん増えていって、徐々にその学校の新設も減りました。私がこの仕事に入ったのは1994年なんですが、ちょうど業績が悪くはなり始めの頃で、職人として10年程、修業しなければいけませんでした。2005年ぐらいまではもう作るだけで一生懸命だったのですが、徐々に仕事が大変な割には売り上げがイマイチだと感じ、なんとかしなければと思い、ECを始められないかと思い始めたのが2008年ぐらいでした。実際オープンできたのが2010年です。石膏業界では今、2025年ですと、私と同じ職人が日本で私含めて2人しかいません。私が入った当時はまだ7、8人いらっしゃいましたが皆ご高齢で、私が10年ほど修業している間に徐々に廃業されました。そのため寡占状態ですが、一方で人口減少の影響を受けています。石膏の1番大きな需要は美術大学の入試ですが、バブル前後と比べると、美大の志願者は減っていて、2010年頃から下げ止まってそんなに変わっていないと思います。そんな中石膏作りの自分の仕事の価値を結構改めて考えました。これだけ時間を使って作って、どうして商売的にダメなのだろうと考えて、やっぱり評価が間違っているのじゃないかと感じました。全てハンドメイドなので、なんとか自分で販路を作っていかなきゃいけないと思い、ECに取りかかったのです。

▽ ECを軌道に乗せるのに大事なこと
ECを2010年に始めて、最初の1年目が月全体の売り上げの5分の1もいかないほどだったので、卸業者さんとまだ付き合いを大切にしなければいかず、5年間ぐらいはECをやりつつ、卸業者さんともなるべく円満に付き合っていくのはちょっと難しかったです。どれぐらいで、どの業者さんをどこで外していくのかっていうのは、ずいぶん工夫しました。あるタイミングでもう納めませんと言うと、一般的にはライバルがいればそっちが納品してきますが、私の場合はライバルがおらず、そこで売るのが止まるので、ECの方にお客様流れるだろうというのをいぶ強く意識してやりました。今後日本を考える中で、例えば着物とか、その商品の魅力や独自性、そういう供給できるものが自分たちしかない、という自信があれば、販路をいたずらに拡大するのではなくて、できるだけ自分たちが有利な販路をよくよく選んでいかないと、かつて高度成長期みたいにこう出せばどんどん広がって売れてという時代とは少し違います。2008年にECを意識し始めたのですが、当初、自社サイトを作るのに必要な写真がなくて、写真を撮るための在庫もなくて、注文が入るたびに、出荷する前にちょっと写真を撮って、それをずっと撮り溜めていったのですが、それが2年ぐらいかかりました。結局全部載せられなかったのですが、徐々に進めていきました。当時、職人仕事をやりながら、品物を作りながら、夜仕事終わった後にそれをずっとやっていたので大変でしたね。ページ作りも一切委託しないで、全部1人でやったんですよ。全然コンピューターに詳しい方ではありませんでしたが、検索エンジンのSEOもなんとなく調べて、全部自分でやって、広告費も今まで1度も課金したことがないのです。他にライバルがおそらくいないだろうこともだんだんわかってきて、広告費も必要ありませんでした。地味なことをやっただけで、もうすぐにGoogleで1位になったので、それで良かったということがわかりました。まず生き残ることが大事です。その伝統工芸とかそういう方でしたら、その工房でしかできない独自性がある何かがあると思うので、その強みを伸ばせればやっていけると思います。

~第325回 ゲスト~

脇本 壮二 氏
石膏像ドットコム
代表

石膏像職人。立教大学ドイツ文学科卒業後、1990年から3年間、日本オリベッティ㈱で金融分野のSE業務に従事。1994年から家業の石膏像製作工房、堀石膏制作に入門。2010年にEC直販サイト「石膏像ドットコム」をスタート。2012年Amazonマーケットプレイス、2014年Yahoo!ショッピングにも進出。2015年に「石膏像図鑑」を自費出版。これまでに約800冊を販売。2018年カラーミーショップ大賞・ベスト店長賞受賞。2017年の「タモリ倶楽部」等テレビ出演多数。

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