今回ゲスト、株式会社豊洲漁商産直市場 代表取締役 長野 泰昌 氏は、東日本大震災を機に40歳未経験で水産業界入り。漁師や卸売市場での経験を活かし、KintoneとBカートを組み合わせた低コストのECサイト「豊洲漁商産直市場」を立ち上げ、電話・FaxからECへ移行を成功させ売上増加を実現。水産業界のDX推進をされていらっしゃいます。
長野氏に『B2B EC』についてお伺いしました。
▽ コピーライターから豊洲の産直やさんへ
私の経歴はかなり特殊です。
2011年の東日本大震災を機に魚屋になりましたが、前職はコピーライターでした。
育ちは東京ですが、生まれが福島県の浪江町、父のふるさとは岩手県陸前高田で、震災の被害を大きくうけました。
自分のいとこも陸前高田で漁師をやっていましたが、現地では市場も流されてしまい、漁師も家族を失い、船を失い、職業も失ってしまった状況で、自分が陸前高田の復興のためにできることを必死でやっていきました。
当社は、APホールディングスという、塚田農場や四十八漁場などを運営している会社の連結子会社で、四十八漁場を立ち上げるので魚を供給してほしいという話がスタートでした。
私は魚に関しては全くの素人で、信頼を得るために真冬の海に一緒に船に乗り操業を手伝うことから始めました。
当初は本当に使い物にならなくて、ある日、船頭に三行半を突き付けられ、お前もう船を降りろと言われたこともありましたが、めげずに続けました。
そして水揚げしていく魚が全てお金になるわけではないということを知りました。
船を降りてからは大船渡魚市場で地方卸売市場とはなんぞや、水揚げがあった魚がどのように売買され、どういうところに流れていくのかを覚えて、東京に戻って中央卸売市場であの時、あの地方卸売市場で皆さんが話していた相手はこういう方々と話をして、こういう売買していたのだということがわかるわけです。
▽ B2Bへの道
当社はそもそもレストランさんに魚を納めていこうと発想していましたが、2017年当時は産直といえば宅急便でいろいろ一緒くたにセットになっているものがほとんどでした。
中身がわからないものも入っていたり、その日によって入っているものが違っていたりすることが問題だと思いました。
東西南北にネットワークを張り巡らして、一匹から皆さんの知っている魚の情報をお渡しし、プラス諸外国から引いきたバナメエビなどをサービスとして乗せると、料理人の方々にお役に立てるのではという発想でした。
しかし実際ご理解いただくのにめちゃくちゃ大変でした。
例えば、現地で内臓を抜いて魚を納めていたのですが、それがお客様の手元に届くと、古い魚を持ってきたのかとすごくお叱りを受けたこともありました。
真摯にその食材を見てらっしゃる方々には目利き力があって、説明をして改めて見ていただいてご納得いただけたら、きちんと評価してくださり、「お前たちの魚ってすごく身持ちがいいからロス率も下がったよ。ありがとうね。」と教えていただけました。
▽ 売上向上に必要なものは
売上が上がったのは、もう魚そのものの力であったと思いますし、本当に愚直に愚直に、私ももちろん、従業員が熱意を持ってお客様にご説明に上がることで、思いが結構伝染していき、使っておられるお客様が、友達の料理長を紹介してくださるといったことに広がっていきました。
現場でその魚を買い付けている当社のメンバーは魚に夢中で、人とのコミュニケーションよりも魚とのコミュニケーションするのが得意という連中です。
君は魚にそれだけ夢中なのだから、そこに集中していくといい、といったことをそれぞれのポジションで振っていきました。
本当にいい魚を欲しいという料理人の方々にはちゃんと伝わり通じるのです。
全然システマティックに云々ではなく、泥臭いことを愚直に、正直に日々積み上げていきました。
▽ EC以前の受注方法
結局受注数が増えていって、基本的には受注は全て電話でやっていました。
まず、自分たちが仕入れた魚とその特徴をエクセルシートに書いて、ファックスやメールで一斉送信します。
その受注を電話で受けていました。
15時スタートをして、夜の12時半まで電話で1つ1つとって、それをファイルメーカーで魚の引き当てからデータベースを使ってやっていました。
その後EC化を進めていくことになるのです。
この他にも盛りだくさん、『B2B』を立ち上げる道程について公開しています!
食品EC、産直ECの売上向上のヒントがたくさん得られます!
それでは長野氏流『B2B』についてぜひお楽しみください!
~第273回 ゲスト~
長野 泰昌 氏
株式会社豊洲漁商産直市場
代表取締役
東日本大震災を機に40歳未経験から水産業界の門をくぐる。漁師、地方卸売市場、中央卸売市場の業務を自ら経験し、さまざまな問題解決に向けた取り組みのひとつとして、業務アプリクラウドサービスKintone+BtoB EC Web受発注システムBカートを活用した大きな投資を必要としないECサイト「豊洲漁商産直市場」をスタート。これまで売上の殆どを占めていた電話・Fax受注からECサイト受注の構成比が短期間で上回り、売上規模も昨対を上回る実績を構築したことから「失敗しないDX化」のノウハウを共有する事で、水産業界全体を盛り上げたいと考える。