今回ゲスト、有限会社谷治新太郎商店 谷治大典 氏は、業界が斜陽産業なため危機感を持ち、周囲の反対を押し切り2013年卒塔婆通販サイト「卒塔婆屋さん」を開設。
カラーミーショップ大賞にて2019年地域賞、2020年優秀賞を授賞、2023年ネットショップグランプリネットショップ担当者フォーラム賞を授賞されていらっしゃいます。
谷治氏に『伝統工芸とEC』についてお伺いしました!
▽御社では何を扱っておられるのですか?
弊社はお墓の後ろに立てている卒塔婆をECで販売しています。
▽ECに踏み込んだ理由は何ですか?
元々妻の実家でやっていて、そこに婿として入り、2012年に代表取締役になったのですが、この業界はどんぶり勘定でやっていて、私が代表についてから会社の帳簿を見ていたら、卒塔婆の売上というのは一気に下がらず、徐々に下がっている状況で危機感を持ちました。
なぜ下がっているのかというと、1件あたりお寺で使う本数が減っており、お客様を拡大しない限りは本数を増やすというのは中々難しいのです。私が代表についてから自分でトラックに乗ってお寺回りをして、2,3カ月やってみたのですが新規のお客様が1軒も取れませんでした。この業界はどこも古いので、100年くらい付き合いがあるのはざらで、中々そこに食い込むのは難しく上手くいきませんでした。
どうしようかと考えた時にネットで売ってみようと考えました。卒塔婆をネットで売るということに関しては、売れないだろうなという不安もあったのですが、とりあえずやってみるだけやってみようということで、当然社員や同業他社は誰がそんなものを買うんだという意見でしたが、2013年にネットショップを立ち上げて最初の3年はほどんど売れませんでしたが、今は何とかやっています。
▽最初の3年間で売るために何かされていたのですか?
広告を色々回したり、自分自身でEC関連のセミナーや集会などにはほとんど参加して、メディア関係も見るようにして、何かヒントはないかと考えて、広告に限らずサイトのデザインだったり売り方を試行錯誤しました。その甲斐あって少しずつ認知されるようになってきたと思います。
▽情報発信はどうされていましたか?
弊社の商品に直接関係するものではありませんが、お寺に役に立つコンテンツというのを書き溜めていたというのがあり、そちらからの流入がかなり増えてきました。直近で言うとお寺にインボイス対策など、そういう記事を専門家に書いてもらったりしながら、どんどんそれを溜めていき、ある時そういえばあのコンテンツの会社は卒塔婆を販売しているよね、と思い出してもらう状況に持っていこうとして、コンテンツをとにかく書き溜めるということを行いました。
▽昔は1日10件くればいい方だとおっしゃっていましたが今はどうですか?
弊社の商品は特殊なので、注文数はそんなにBtoCの商品などに比べて沢山くるわけではないですが、2015年の売上規模でいうと、その当時の大体1ヶ月の売上が今の1日の売上とか、マックスで2014年の年間の売上を1日で売り上げるくらいの規模にはなっています。ほとんど地べたを這う時代が続きましたが2016~2017年くらいから一気に売上が倍々に増えていったという感じです。
▽それは何かキッカケがあったのですか?
コロナ禍というのは一つのキッカケでしたが、その前から売上が伸び始めていました。お寺さんの口コミでお寺さんが仲のいいご住職に「あそこいいよ」というのを1人が5軒くらい繋いでくれて、それで一気にお客様の数が伸びたという形です。
お寺さん同士、基本的には宗派で分かれていまして、近いところの4,5軒あたりは仲がいいみたいなんですが、同じ宗派だからといって全国的に横が繋がっているかというと、中々そんなことはないとよく住職から聞きます。
▽お寺さんも大変ですが、卒塔婆を扱っていらっしゃるところも大変ですよね。
結構同業他社は大変だという話は入ってきますね。弊社より先にECで売っていた会社はあるのですが、どちらかというと卒塔婆製造業というか、仏具店が卒塔婆を仕入れて売っていたり、木工品を売っている会社が棚の端で当番をやっていますというのがあり、専業で卒塔婆製造を昔からやってて通販をやったのは初めてか2番手だと思います。
▽コンテンツはどんなことをされていますか?
一番多いのがWordPressの方でコンテンツを書いて、ECサイトの方にデザインを同じにして埋め込んでいます。SNSやYouTubeもしていますが、やはりWordPressのコンテンツというブログ形式のものが一番伸びています。
この他にも盛りだくさん『コンテンツ戦略』について公開しています!
新しいことに挑戦したい企業様のご参考になるかと思います!
それでは谷治氏流『伝統工芸とEC』、ぜひお楽しみください!
~第220回 ゲスト~
谷治 大典 氏
有限会社谷治新太郎商店
代表取締役
新卒で、小売業へ新店のスタッフ教育係、売り場責任者として仕入れ売り場レイアウト作成などに従事。
2011年妻の実家が経営する卒塔婆製造販売業有限会社谷治新太郎商店に入社、製造や営業を担当、2012年代表取締役就任、斜陽産業であり、売上利益ともに毎年少しづづ減少していることに危機感を持ち、周囲の反対を押し切り2013年卒塔婆通販サイト「卒塔婆屋さん」を開設、カラーミーショップ大賞にて2019年地域賞、2020年優秀賞を授賞、2023年ネットショップグランプリネットショップ担当者フォーラム賞を授賞、現在は中小企業向けのECに関する記事執筆・講演も行っている。