今回ゲスト、株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役 本谷 知彦 氏は、EC業界のスタンダードな調査レポートとなっている経済産業省の電子商取引市場調査を7年連続で手掛けられ、2022年1月 ECに特化した日本初のシンクタンクとして株式会社デジタルコマース総合研究所を設立されました。
本谷氏に『EC化率』についてお伺いしました!
▽本谷氏がEC化率の生みの親と言われている理由は?
正確に言うと、前職の大和総研で経済産業省の電子商取引市場調査を私が担当する前から、言葉としてはあって、数値の算出はされていたのですが、その算出方法がイマイチだねということがあって、それを経済産業省に提案をして、算出方法をガラッと変えて、今のスタイルにしてベースを作ったのが、いわばEC化率2.0を作った、ということになります。
最初に行ったのは2014年ですが、前後の比較が必要ということだったので、正確には2013年からのEC化率の連続性が保たれているということになります。
▽2030年問題とは?
2030年にEC市場がピークアウトをつける可能性がある、という内容のレポートを出しました。
海外の指標もよく出されていますが、中国は30%以上、アメリカは15~16%、日本はまだ8.78%になっています。
色々なところで話を聞くと、諸外国と比較して日本はEC化率が低いから、まだ伸びしろがあるというロジックを語る人が実に多いですが、本当にそうだろうか、と私は言いたいと思っています。
▽2030年問題の根拠は?
繰り返しになりますが、EC化率はアメリカで15~16%、中国は30~40%、イギリスは30%、韓国も20%超えていて、諸外国と比較すると日本は非常に低いということなので、EC事業者のセールストークの一環として、そのロジックを使う気持ちは十分に分かります。
日本のEC化率が伸びづらい根本的理由はいくつかあると思いますが、一番大きい理由は、日本はリアル店舗の充実度が、他国と比較して格段に違う点だと思います。
日本とアメリカの小売店舗網を比較すると、面積はアメリカが日本の26倍、人口も2.6倍にも関わらず、小売拠点数は100万店で、ほぼ同じになっていて、このことからも、いかに日本の小売店舗網が密であるか、ということが数字でも分かります。
どうしても小売の利便性が高くなっていますが、小売店舗数が多いだけではなくて、卸が小売をサポートする厚みも比較すると、アメリカより日本の方が1.5~2倍弱、サプライチェーンがきれいに整備されて充実しているという数字的な裏付けがあります。
▽2030年問題の本論は?
日本のEC市場の中で、BtoB、EC、物販系、サービス系デジタル基盤は除いて、2021年で13兆円の市場規模でした。
13兆円に類似する規模の指標が2つあって、1つがコンビニ市場で12兆円、もう1つが携帯電話の大手3キャリア市場の通信料金売上合計で12兆円で、EC市場とほぼ近くなっています。
その類似しているコンビニや携帯電話の市場の拡大の成り立ちを振り返ってみると、そこにヒントがあります。
コンビニで見ると、日本のコンビニの第1号店は、1974年のセブンイレブン豊洲店で、コンビニ市場がピークアウトしたのは2019年とされていて、45年もの長い時間が掛かっています。
一方、携帯電話市場は、NTTドコモの営業開始が1992年、そして2020年にピークを付けたと考えているので、28年掛かっています。
リアルとネット物流を比較するのは難しいところがありますが、コンビニ1店舗を出店するのに2000~3000万円掛かることと比較すると、EC市場の参入障壁が低いので、EC市場が飽和するのは45年も掛からないという一つの目安になります。
携帯電話市場と比較すると、EC市場は携帯電話市場のようにバンドワゴン効果が作用するような市場の成り立ちではないことを考えると、28年以上掛かるだろうと予想が出来て、28年以上45年未満という一つの幅が出来上がって、そうすると30~35年という目安の期間が出てきます。
そこでEC市場元年を、楽天市場がスタートした1997年として、CAGR(年平均成長率)は2006~2011年の5年間で約17%、その次の5年間は11%、2016年~2021年は8%強、2022年は恐らく5%前半~半ばで、2021~2026年は3~4%、2026~2031年が1~2%となる感じなので、ちょうど2030年あたりが1つのピークアウトの目安だと思います。
先程の28年以上45年未満理論で考えると、1997年の楽天市場でスタートして2031年をピークアウトとすると、ちょうど34年くらいになるので、28年以上45年未満の中の34年のところにピタッと合ってくるので、このことから2030年頃にピークを付けると予想していますが、もし外れてしまったとしても、外れた原因を振り返ってみて、その先に生かすお話をしたいと思っています。
日本の小売市場、物販は150兆円で、ほぼ20年間変わっていないので、今後も大幅に変わることはないと思うので、従って日本のGDPの伸びも厳しいという理論に繋がっていきます。
ですので、小売市場の活性化なくして、日本のマクロ経済の活性化はあり得ないと思います。
このほかにも盛りだくさん、『EC化率』について公開しています。
それでは、本谷氏流『EC化率』、ぜひお楽しみください。
~第198回 ゲスト~
本谷 知彦(もとたに ともひこ)氏
株式会社デジタルコマース総合研究所
代表取締役 ECアナリスト
1990年大和総研入社。システムエンジニア、ITの主任研究員、金融システム系コンサルタントを経て、2013年より国内外の産業調査・コンサルティング業務にシニアコンサルタントとして従事。
2017年担当部長兼チーフコンサルタントに就任。EC業界のスタンダードな調査レポートとなっている経済産業省の電子商取引市場調査を2014年から2020年にかけて7年連続で手掛ける。
2021年12月末に同社を退職し2022年1月 ECに特化した日本初のシンクタンクとして株式会社デジタルコマース総合研究所を設立。
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