「ウェブアクセシビリティ」という言葉をご存知でしょうか?
これは、Webサイトを利用する人の年齢や障害の有無に関わらず、誰でもWebサイトを利用できることを意味する言葉です。
現在、ECサイトを含むWebサービスは多くの人にとって生活に欠かせないインフラとなっています。
また、改正障害者差別解消法が施行されたことで、障害のある人への合理的配慮が民間事業者に義務化されたことも、ウェブアクセシビリティの向上を後押ししています。
今回は、ECサイトにおける「ウェブアクセシビリティ」改善の具体例を紹介します。
目次
ウェブアクセシビリティとは
ウェブアクセシビリティとは、Webサイトを利用する人の年齢や障害の有無に関わらず、誰もがサイトを利用できることを示す言葉です。
「ウェブ」はWebサイトを指し、「アクセシビリティ」は“近づきやすい”や“アクセスできる”という意味を持つ言葉で、直訳すると「ウェブの情報やサービスにアクセスできる」という意味になります。
ウェブアクセシビリティが確保されたWebサイトは、一般的に以下のような状態であることが望まれています。
- 目が見えなくても、Webサイトに掲載されている情報が伝わり、操作できる
- 一部の色を区別できなくても情報が欠けない
- キーボードだけで操作できる
- 耳が聞こえなくても、動画や音声コンテンツの内容を理解できる
ウェブアクセシビリティの具体例
ウェブアクセシビリティを実現するための主な取り組みは、次のようなものがあります。
- 文字に色をつけるときや画像に文字を書き込むときに、文字の背景色とのコントラスト比を高くする
- 単語の文字間にスペースやタブを用いない。文章の折り返し位置を調整するためにスペースや改行を使わない
- キーボードだけで操作できるようにする。また、キーボードで操作した時、フォーカスしている部分を認識しやすいようにする
- SNSやブログに画像・写真を投稿する時に代替テキスト(alt属性)をつける
- リンクであることを認識しやすくし、リンクテキストだけでリンク先の内容を予想できるようにする
- 色だけで情報を区別しないようにする
- 映像コンテンツには字幕をつける
ウェブアクセシビリティを推進する取り組みの一つは、画面読み上げソフト(スクリーンリーダー)を利用するユーザーに配慮したコンテンツ作成です。
例えば、写真や画像には代替テキスト(alt属性)を設定することで、視覚障害のある方も内容を音声で理解できるようになります。
また、単語間にスペース(空白文字)を入れると、スクリーンリーダーで正しく読み上げられないことがありますので、文字間隔の調整にはスペースを使わないことが重要です。
コンテンツの順序にも配慮することで、Webサイトの情報がより伝わりやすくなります。
さらに、テキストリンクを設置する際は、リンク先の内容が予想できるような文言を使うことが求められます。
色の区別が難しい方への配慮も重要で、テキストに色を付ける際には、文字と背景のコントラスト比を高めることが推奨されます。
入力必須の項目を強調する際は、色だけで表現することを避けることで、ウェブアクセシビリティの向上につながります。
最近ではECサイトに動画を掲載することが増えており、音声が聞き取りにくい方のために動画に字幕を付けることで、ウェブアクセシビリティを確保できます。
この他にも、ウェブアクセシビリティを高める具体的な方法は「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」に掲載されていますので、ECサイトのウェブアクセシビリティを向上させたい事業者はぜひ参考にしてください。
なぜウェブアクセシビリティが重要なのか
ECサイトを含めたWebサービスが多くの人にとって生活のインフラになった現在、あらゆる人にとって使いやすいWebサイトやECサイトを作ることの重要性は、これまで以上に高まっています。
国内のインターネット利用率は2022年時点で84.9%であり、ネットショッピングの利用率(2人以上の世帯)は52.7%でした。
こうした数字を踏まえると、行政サービスや災害情報などを掲載したWebサイトはもちろんのこと、ECサイトを含めたWebサービスは多くの人の生活を支えていると言えるでしょう。
なお、総務省によれば2022年時点で障害者手帳を持つ人の人数は、厚生労働省の推計で「視覚障害」が27万3000人、「聴覚・言語障害」は37万9000人です。
また、高齢者(65歳以上)の人数は3623万6000人で総人口の29.0%を占めています。
2024年4月に改正障害者差別解消法が施行
ウェブアクセシビリティが注目される理由の一つに、改正障害者差別解消法が2024年4月1日に施行されたことがあります。この改正により、障害を持つ人々に対して合理的配慮を行うことが民間事業者にも義務付けられました。
また、合理的配慮を実現するための環境整備は努力義務とされています。
Webサイトの運営において、ウェブアクセシビリティの確保は、障害のある人に対する合理的配慮のための環境整備の一環とされています。政府は、ウェブアクセシビリティの確保を努力義務とする見解を示しています。
障害のある人への合理的配慮とは、社会生活におけるバリアを取り除くために必要な対応を、過度な負担をかけずに行うことです。
例えば、「駅員が車椅子の利用者をサポートする」「窓口で筆談や手話を用いてコミュニケーションを図る」といった例が挙げられます。
さらに、合理的配慮を適切に行うため、環境の整備が努力義務とされており、ウェブサイトの場合にはJIS X 8341-3:2016に準拠したサイトを構築し、ウェブアクセシビリティを確保することが求められています。
ウェブアクセシビリティに対応するメリット
ウェブアクセシビリティを意識したWebサイトを作ると、サイトを運営している事業者さんにもメリットがあります。
ECサイトのウェブアクセシビリティを高めることで得られる主なメリットとして次の3つがあります。
- ECサイトの利便性が向上し「顧客から選ばれる理由」になる
- 画像にalt属性をつけるとSEO効果が期待できる
- 企業イメージの向上につながる
ECサイトの利便性が向上し「顧客から選ばれる理由」になる
ECサイトのウェブアクセシビリティを確保すると、障害を持つ人や高齢者など多くの人にとって買い物がしやすい環境を整えることができます。そのことがECサイトの差別化要因となり、顧客から選ばれる理由の1つになるでしょう。
画像にalt属性をつけるとSEO効果が期待できる
Webサイトの写真やイラストなどの画像ファイルにalt属性(代替テキスト)をつけると、検索エンジンのクローラーが画像のalt属性を読み取り、画像の内容を理解することで、検索結果に表示されやすくなるとされています。
企業イメージの向上につながる
改正障害者差別解消法が施行されたことにより、すべての人に配慮したWebサイトやECサイトの構築が社会的に重要視されています。
ECサイトのバリアフリー化に積極的に取り組むことは、企業のイメージ向上にも寄与するでしょう。
まとめ
ウェブアクセシビリティは「情報のバリアフリー化」と捉えると理解しやすいかもしれません。
実店舗のバリアフリー化には、車椅子利用者がスムーズに移動できるように段差を排除する取り組みなどがあります。
同じような観点から、ウェブサイト上の様々な障壁を取り除き、誰もがサイトを利用できるようにすることがウェブアクセシビリティを推進することになります。
ECサイトのウェブアクセシビリティを向上させることの重要性は、今後ますます増していくと考えられます。
「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」などデジタル庁が発行している資料を参考にしながら、まずは実行可能なことから始めてみると良いでしょう。