ECを営んでいる方、特にマーケターの方であれば、UGCというワードを聞いたことがある方もおられると思います。
近年、InstagramやX(旧Twitter)、プロダクト・サービスのWebサイトなどでUGCをよく目にします。UGCはメリットに目が行きがちですが、デメリットや活用時の注意点もあるため、対応を間違えるとクレームにつながる可能性もあります。
今回はUGCの基礎知識やメリット・デメリットをご紹介します。
UGCとは
UGCは「User Generated Content」の略であり、「ユーザー生成コンテンツ」という意味です。
基本的には企業やメディア主体が作成するのではなく、一般のユーザーによって作られたコンテンツを指しており、SNSやnote、ブログ、動画・写真投稿サイトなどのソーシャルメディアにユーザーが投稿したコンテンツや口コミ、書き込みなどが主に該当します。
UGCとCGM、IGCの違い
UGCと混同されがちなのがCGMです。
CGMは「Consumer Generated Media」の略で、一般的には「消費者生成メディア」と訳されます。
UGCと似ていますが、CGMはクックパッドやアットコスメ、Yahoo!知恵袋や掲示板サイト、口コミサイトなど、ユーザーの投稿によって成り立つメディアです。
一方、UGCは多くの場合、SNSなどで企業のプロダクト・サービスを利用したユーザーが「美味しい」などと反応して投稿したコンテンツを指します。
IGCも混同されがちですが、IGCは、「Influencer Generated Content(インフルエンサー生成コンテンツ)」の略で、インフルエンサーによって作られるプロダクト・サービス紹介のコンテンツを指します。
自発的に投稿や口コミが行われるUGCやCGMと違って、多くの場合、企業からの依頼で制作されています。
UGCがマーケティングで重視される背景
SNSの普及による購買行動の変化
スマートフォンなどのモバイル端末が「1人1台」を超える時代となり、インターネットがより身近な存在になった結果、個人が気軽にSNSなどを活用して情報を発信したり、収集したりできるようになっています。
それが必然的にUGCの増加に寄与し、さらに企業やメディアにとって見逃せない投稿も多いことから、注目されるようになってきたと考えられています。
UGCが重要視されるようになった結果、ユーザーはプロダクト・サービスの利用や購入の際、Googleなどの検索エンジンだけでなく、TwitterやInstagram、YouTube、TikTokなどで消費者の生の声を調べて参考にするケースも若い世代を中心に増えてきました。
企業が気づかなかったさまざまな声を聞ける
企業作成のコンテンツではなく、ユーザーが自ら作成したUGCは、企業の手垢がついていないため、消費者から自社のプロダクト・サービスが本当はどう見られているか、ソーシャルリスニングする上で貴重な資料になります。
また、企業が気づかなかった魅力や欠点をUGCによって初めて認識できることもあり、プロダクト・サービスの改善に活かしたい企業側と、手垢のついていないレビューを知りたい消費者の双方にとって有益になっています。
Web広告の規制強化
Web広告の中でもリターゲティング広告の規制が強化されつつあります。
その理由としては、Webサイトに訪れたユーザーのデータを蓄積して、再び広告を表示するためにサードパーティーCookieを利用しているためです。
サードパーティーCookieとは、第三者が発行しているCookieのことで、プライバシーの観点で問題視されています。
また、近年はWeb広告の頻度に煩わしさを感じたり、内容を問題視したりするユーザーも少なくなく、広告の露出の仕方によってはブランドイメージのダウンにつながるおそれもあります。
そんな中で、UGCは基本的に無料かつ、自然な形での拡散が期待できるため、企業が注目するポイントとなっています。
UGCのメリット
親近感の湧くコンテンツが作れる
一般ユーザーがプロダクト・サービスを推奨するUGCを目にすると、認知だけでなく、興味・関心、親近感を持ち、購買意欲が高まります。
企業はさまざまなプロモーション活動で自社商材の良さを強調しますが、消費者は信用性に納得せず、不審に感じることもあります。
一方、UGCはユーザーが体験したコメントが多く、消費者に信用と親近感を与えやすいです。また、UGCには企業が想定していない内容も含まれることが多く、新たなプロモーションや開発のヒントになることがあります。
SEOの効果が期待できる
UGCは基本的にSEOに影響しないと言われていますが、ポジティブなUGCが多いと良質な外部リンクの獲得に役立ち、SEOに好影響を与える可能性があります。
Googleは読者にとって有益なコンテンツを重視する方針なので、UGCはその1つの目安となると考えられます。
UGCのデメリット
情報の正確性が担保できないケースが有る
UGCのメリットは企業のフィルターを通していない点ですが、逆に投稿内容の正確性をコントロールできないのはデメリットです。
ユーザーの価値観や利用状況が異なるため、発信情報の普遍性や正確性が不透明になり、誤った情報が投稿され拡散すると、企業にダメージを与え、正面から対処せざるを得ない問題に発展することもあります。
著作権や肖像権などの権利侵害が起きる可能性がある
UGCはユーザーによって作られるコンテンツであるため、著作権や肖像権、薬機法などに違反した内容が企業の口コミやコメント欄に投稿される可能性があります。
そうした法律違反が発生しないような仕組み作りや発生時の対処法をあらかじめ準備しておく必要があります。
UGCの生成を促す方法
ユーザーとの密なコミュニケーションからファン化
たくさんのUGCを生み出すためには待つだけでなく、企業側からのアクションも重要です。ユーザーとの接点を最大限に活かすことがポイントです。
例えば、店頭接客、梱包の紙、同梱物、メルマガ、SNSのDMなどで消費者に印象的なコミュニケーションを図ることで、「ユニークな取り組み」や「丁寧な接客」としてUGCのきっかけを作りやすくなります。
さらに、商品の購入者に感想を書いてもらいポイント還元する施策は、UGC発生だけでなくLTVの向上にもつながりやすいです。
SNSキャンペーンでハッシュタグを活用
特定のハッシュタグをつけて投稿したユーザーに抽選で賞品をプレゼントするキャンペーンも、短期的にUGCを増加させる有効な手段です。
さらに、ハッシュタグやキャンペーンをきっかけにプロダクト・サービスを認知したユーザーが、自分の課題が解決できそうだと感じると、見込み客や顕在顧客になりやすくなります。
インフルエンサーの活用
SNSで影響力のあるインフルエンサーに商品やサービスを体験してもらい、その感想や写真をSNSに投稿してもらう手法も有効です。
これはインフルエンサーマーケティングと呼ばれます。インフルエンサーの投稿によりフォロワーも影響を受け、UGCを作成することがあり、認知拡大にスピーディな効果が期待できます。
ただし、インフルエンサーを活用する際は、ステルスマーケティングにならないよう企業との関係性を明確にすることが重要です。
一度に多数のインフルエンサーを活用しないことや、誤った情報が拡散しないよう、インフルエンサーに商品やサービスをしっかり理解・納得してもらってから活用することが成功のポイントです。
UGC活用時の注意点
企業にとって魅力的なUGCですが、メリットだけでなく、活用時の注意点もあります。これらは深刻な事態を招くおそれがあるため、事前に理解しておきましょう。
間違った情報やネガティブな内容が拡散される可能性がある
ユーザー目線で作られたコンテンツが作成・拡散されるため、商品の詳細や店舗情報などに誤りがある場合でもそのまま広がる可能性があります。
誤った情報やネガティブな内容が拡散されると、ブランドイメージを損ね、クレームにつながることもあります。
わかりやすい表現や画像を使用するのはもちろん、エゴサーチをして悪質な情報の拡散を防ぎ、ネガティブなUGCを見つけたら企業から否定するなどして情報のクオリティを保つことが必要になります。
UGCが発生しにくい商品やサービスがある
コンプレックス系のプロダクト・サービスや、身近すぎる商品はUGCが生成されにくい傾向があります。
例えば、プライベートな悩みを解消する商品や、コンビニやスーパーで販売される日常的な商品は、特別感がないため、UGCが生成されにくいです。
権利侵害に注意が必要
UGCを自社のサイトやLP、広告などに使用する場合、勝手に掲載すると著作権侵害につながることがあります。
投稿者の使用許可を取るのが原則です。
また、UGCの写真を使用する場合、第三者が写りこんでいないか確認が必要です。無許可で第三者が写りこんだ写真を掲載すると肖像権侵害で訴訟に発展する可能性があります。
まとめ
個人が手軽に情報発信できる現代では、UGCは企業にとって大きなメリットと注意点の両方があります。リアル店舗・ECを問わず、顧客目線を徹底することで、ユーザーが自然にUGCを生成し、拡散するのが理想です。
キャンペーンを実施しながら、UGCを効果的に活用してブランディングや見込み客、ファンの獲得を目指しましょう。