コロナによる巣ごもり消費が促進することにより、ECサイトに出店される店舗様も多いことと思いますが、「RasS」という小売のサービスについてご存知でしょうか?
今回は、小売業の未来を大きく変える可能性を秘めた「RaaS」について解説したいと思います。
RaaSとは?
「RaaS(ラース)」とは「Retail as a Service(リテール・アズ・ア・サービス)」のことで、企業がこれまで蓄積してきた顧客情報やノウハウを活用し、テクノロジー企業の持つ技術と掛け合わせてサービス化することを指しています。
RaaSをはじめ、SaaSやPaaS、IaaSといった「〜aaS」というビジネス用語を耳にする機会が増えてきたと思いますが、「~aaS(as a Service)」とは、製品そのものを販売するのではなく、製品が持つ特定の機能をサービスとして提供することです。
ちなみに「Robotics as a Service(ロボティクス・アズ・サービス)」という、同音の用語がありますが、「Retail as a Service」とは別物ですのでご注意ください。
新しい小売モデルが生み出すメリット
RaaSによって、今後の小売業のビジネスモデルは大きく変わっていくでしょう。
例えば、「体験型ストア」であり、月額費用を支払うことにより商品の展示・スタッフの配置・在庫・物流管理、顧客データの分析・管理といったサービスを受けられるサブスクリプションモデルのことです。
販売が目的ではなく、製品を発見・体験してもらうことを目的とした、新しい小売りモデルで、この店舗運営サービスを利用することで、小売企業は商品の設計や企画といった、企業価値を高めるマーケティング業務に注力できることでしょう。
こうした次世代型の小売モデルは、設備投資や人件費の削減にもつながるため、経営効率を上げる意味でも注目されています。RaaSの導入によって、資金力に不安のあるスタートアップ企業でも、自社ブランドの世界観を多くの人々に認知してもらえるチャンスが広がると期待されます。
RaaSの事例
RaaSは「次世代型小売業」と呼ばれ、小売業に大きな革命をもたらすと言われています。事実、世界的大企業がRaaSを取り入れることで、これまでになかった全く新しいビジネスモデルを創出しています。ここでは、RaaSを活用して新たな顧客体験を生み出した企業の成功事例を見ていきましょう。
Kroger
世界最大手の食品スーパー「Kroger(クローガー)」と「Microsoft(Microsoft)」がパートナーシップを結び、RaaSを用いたデジタル小売戦略を展開した結果、Krogerが持つ顧客データと、Microsoft Azureのアルゴリズムを活用したスマートシェルフ「EDGE Shelf」が開発されました。
EDGE Shelfはどういうものかというと、電子タグによる商品管理システムを用いた無人レジを実現可能とし、スマートフォンアプリでバーコードを読み込むだけで購入・決済が可能としたものです。
さらに、このシステムを自社利用するだけでなく、RaaS製品としてほかの小売業者に提供するという新しいビジネスモデルの構築にも成功しています。
b8ta
サンフランシスコ発のベンチャー企業「b8ta」は、D2C(流通業者を通さずメーカーが直接販売を行う形態)製品などを扱う体験型ストアで、小売企業はサブスクリプションサービスとして、b8taに月額費用を払うことで製品を展示してもらいます。
そしてb8taは、製品の展示や販促、物流サポート、顧客データの分析・管理を行うという、RaaSの理想形と言えるビジネスモデルまでも実現、日本でも昨年8月からサービス展開をスタートしました。
今まではECサイトなどオンライン上で行われていたD2Cでしたが、実店舗でも取り組むことができる仕組みとして注目されています。
Amazon
おなじみのAmazonも、「Amazon Go(アマゾン・ゴー)」というRaaSを展開しています。
Amazon Goは、2018年に1号店が開店したのを皮切りに、2021年までには3000店舗まで増やす計画をたてており、スマートフォンを持って入店し、購入したい商品を選んで店を出れば、自動的に決済が完了するという、レジなしで購入・決済が可能な無人コンビニとして話題になったことは記憶している方もられると思います。
またAmazonは、RaaSを自社利用するだけでなく、小売業向けソリューションとして活用した、レジなし決済システム「Just Walk Out」の販売も予定しています。
Amazonの事業展開こそ、まさに小売のサービス化を体現しているビジネスモデルと言えるでしょう。
まとめ
小売業の未来は、IT技術との融合によって大きく変わろうとしており、顧客情報や購買行動をもとに、まったく新しい顧客体験を提供する「RaaS」は、その最たる例と言えます。
小売業が持つさまざまなデータと、ITベンダーが持つ技術をかけ合わせることで、これまでにない新たなビジネスモデルが創出され、従来のように商品を仕入れて販売するだけのビジネスモデルでは、十分な価値提供が困難になってきました。
これからは、優れた顧客体験をベースとした価値提供が求められていきますので、付加価値やコストでお悩みの小売業者の方は、RaaSを研究してみましょう。