今回ゲスト、株式会社ふくべ鍛冶 干場 健太朗 氏は、包丁研ぎの本格的な職人技を気軽に注文できる「ポチスパ(包丁研ぎ宅配サービス)」を開発。震災後は、そのシステムを生かした伝統産業品等の修理プラットフォーム「リペアクラウド」の立ち上げなど地域産業支援をされていらっしゃいます。
干場氏に『伝統工芸DX』についてお話をお伺いしました!
▽職人の採用や教育はどうしていますか?
当時は「製造担当」と「修理担当」で職人を分けていたため、修理の依頼が多い時期は、製造が進まない、と職人同士で衝突することもありました。そこで、注文の状況に応じて柔軟に動ける体制を整えました。注文が多い時期には鍛造の職人も研ぎの作業を行い、反対に修理が少ない時期には全員で製造に回るというように、職人全体の動きを最適化しました。12年前は私と父の2人だけで作業していましたが、現在は地元の漁師さんや大工さんなど、かつて職人ではなかった中途採用の方々が多く働いています。柔軟な発想で仕事に取り組んでくれるため、状況に応じて役割を変えることでチーム全体がうまく回っています。現場では父が直接指導し、職人としての基礎を見て覚えることができます。
日本の伝統工芸の現場では「技術は見て盗む」という文化が根強いですが、私はより効率的な教育を目指し、動画マニュアルの作成やYouTube、全国の同業者との情報交換を通じて独自の教育システムを構築しました。修行中も“商売につながる実践の中で学ぶ”仕組みにしており、物流ルートの最適化や作業効率の向上にも取り組んでいます。
修理業務は教育にも最適です。1本ごとに状態が異なるため緊張感がありますが、数を重ねることで技術が磨かれます。お客様から届く感謝の手紙が職人たちの励みになっています。職人依存の属人的な体制では継続が難しいため、技術と業務の両面で仕組み化を進めています。
▽BtoB2Cでの成功の秘訣は?
これまでBtoCで事業を行ってきましたが、全国展開を見据えて、BtoB2Cモデルに挑戦しました。会員制の食品宅配サービスを運営する企業と提携したことで、注文が一気に増加し、当初は受注管理が追いつかず“うれしい悲鳴”の状態に。既存の仕組みでは対応できず、独自の受注管理システムを開発することにしました。修理業務に特化したシステムが世の中になかったため、DX補助事業の支援を受け、石川県内のIT企業と協力して約1年かけて構築しました。このシステムでは、お客様と店舗の双方でビフォーアフターを確認でき、ミスを大幅に減らすことができます。現在は数百、数千件の注文が来ても安定して処理できるようになり、個人・法人問わず一元管理が可能になりました。BtoB2Cの仕組みは最初は声をかけてもらったことがきっかけでしたが、成果を上げたことで現在は10社ほどに横展開しています。
また、レンタル包丁サービスも展開しています。箱と一緒にレンタル包丁を送付するスタイルで、実際に使ったお客様が「切れ味が良すぎる」と気に入り、そのまま同モデルを購入されるケースも多いです。体験型のサービスにより接点が増え、ギフトや記念日需要にもつながっています。
現在の売上比率は物販が約6割、修理が約4割です。修理の利用者は年間1万人を超え、年々増加しています。職人不足が懸念されますが、「学びたい」という志を持つ人材は一定数おり、地元・県外問わず募集しています。教育はeラーニング化を進め、OJTと併用することで短期間で習得できる仕組みを整えました。工程の自動化も進め、機械化できる部分は極力自動化し、職人の技術が必要な工程は手作業で丁寧に仕上げています。
▽今後の展望について教えてください。
現在、オランダ・デンマーク・アメリカなど4カ国に包丁を提供しています。今後は受注管理システムと技術ノウハウを海外にも展開し、日本製包丁を長く使ってもらえる環境づくりを進めたいと考えています。
特に人気が高いのは、16層や32層の鋼を重ねた「ダマスカス包丁」です。一本一本模様が異なり、芸術性の高い美しさから海外でも高い評価を受けています。SNSを通じて情報発信を行い、興味を持った海外のユーザーに直接届くよう取り組んでいます。また、海外では包丁が2〜3年で廃棄されることも多く、職人としては非常にもったいないと感じています。本来、包丁は10年以上使えるものです。今後は受注管理システムや研ぎのノウハウを共有し、各国に適したDXを組み合わせることで、「日本の包丁を長く使う文化」を世界に広めていきたいと考えています。
このほかにも盛りだくさん、『伝統工芸DX』について公開しています!
『伝統工芸DX』をご検討中の企業様のご参考になるかと思います!
それでは、干場氏流『伝統工芸DX』、ぜひお楽しみください!
~第320回 ゲスト~
干場健太朗 氏
株式会社ふくべ鍛冶
代表取締役
1980年生まれ、能登町出身。大学で経営学を学び能登町役場に入庁。地域産業の活性化や伝統文化の継承支援などの業務に携わる。12年後、母の病死を受け家業で創業100年以上の鍛冶屋を4代目として継ぐ。包丁研ぎの本格的な職人技を気軽に注文できる「ポチスパ(包丁研ぎ宅配サービス)」を開発。震災後は、そのシステムを生かした伝統産業品等の修理プラットフォーム「リペアクラウド」の立ち上げなど地域産業支援を行っている。
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