今回ゲスト、株式会社豊洲漁商産直市場 代表取締役 長野 泰昌 氏は、東日本大震災を機に40歳未経験で水産業界入り。漁師や卸売市場での経験を活かし、KintoneとBカートを組み合わせた低コストのECサイト「豊洲漁商産直市場」を立ち上げ、電話・FaxからECへ移行を成功させ売上増加を実現。水産業界のDX推進をされていらっしゃいます。
長野氏に『B2B EC』についてお伺いしました。
▽ ECサイトを立ち上げた理由は
漁業ではまだ珍しいEC自社サイトを昨年9月から始めました。
全て人力でやってきたところにECを導入した背景には、次世代へバトンを渡すためです。
限られたヒューマンリソースの中、今の若い世代が一番ビジネスをやりやすい方法、ツールとしてECサイトは構えるべきだと以前からずっと思っていました。
資本面で厳しいと思っていましたが、2021年の3月にオイシックス・ラ・大地に連結子会社として受け入れられました。
彼らはECサイトのトップアスリートなので、相談をさせていただいたら具体的にできることを提案いただき去年9月に当社ECサイトをリリースしました。
第一次産業に関してのシステム構築のノウハウはあるなかで、魚についてはわからないエンジニアの方たちとは、とにかく徹底的に話し合いました。
▽ ECサイトと電話受注それぞれのメリット
電話だと決められた回線数しか受注できず常にパンクしていたのがEC化により対応できるようになったことです。
お客様のご希望のお時間で、好きなタイミングで発注ができるというのはメリットが大きくて、我々が絶対に受注を取れていないだろうという時間帯ですらも注文が入っています。
対して電話注文のメリットは、細かいニーズなどに対応できることです。
例えば甘鯛は、うろこを残しておくのが割とスタンダードですが、取ってほしいというニーズなどというものは相変わらず電話で取っています。
現在ECと電話両面で受注しており、インターネットは1時間早く受注開始としています。
一生懸命仕入れてはいますが、どうしても売り切れてしまうような魚を販売する場合に皆さんがフェアな形で発注できるようにするためにECで対応するようにしました。
▽ ECデータの使い方
毎日仕入れが変わるごとに商品のデータベースを更新しています。
1年経ちデータが積んでくると、それが大きなビッグデーターになってきます。
そうするとこの時期にとれる魚が今年も上がっているから、写真を変えるだけ、在庫を入れるだけ、というように入力の工数が減っています。
また一元データベースを、1人は事務所で、1人は豊洲市場で買い付けに入っているバイヤーがタブレットで見るといったように情報を一元管理できているので、情報が抜けるなどのミスが非常に減りました。
水産業界はその場限りのやりとりが多いなかで、数字データの部分をEC化することによって、忘れてしまうこともなく、書き損じることもなく、きちんとそのデータがある上で判断しているので、得意ではない部分を大いに補填してくれるのを実感しています。
魚屋にとってなかなか画期的なシステムができたので、我々はクローズドにしないで、水産業全体が盛り上がるためにもオープンにしています。
そうすることでその会社の持ち味を伸ばしていくことに注力することができ、結果消費者の方々が1番いい形で魚を手に取れることができるのが大事です。
魚を食べる人も減っているし、取れ高が限られてきているので、喧嘩なんかしている場合ではなくて、水産業に携わる者たちとして、消費者の方々に向き合って、消費者のために何をするべきかをきちんと、直接コミュニケーションをとっていきながら、オープンな形でいければいいなと思っています。
▽ EC化で売上が上がるしくみとは
EC化によって社内の受注の部分で工数が減っていて、デジタルネイティブ世代の若者がみんなサクサクやっているので、大いに時短につながっています。
日に日に電話対EC比率がどんどん、高くなっているのを実感していて、おそらく、7:3ぐらいにはなっていると思います。
その分、魚そのものに向き合う時間、目利きの時間を分配できるメリットを感じています。
本来ヒューマンがやるべき仕事により注力できるし、いわゆるDX化しなければいけないデータベースに関してはそちらにお任せするので、いい形で会社が回っているように感じられます。
時間が浮いた分専門性を上げることを業界みんなでやっていくことが武器になるはずです。
各社それを競い合うことが切磋琢磨していくことになると業界が盛り上がるのでいいなと思っています。
この他にも盛りだくさん、『B2B EC』について公開しています!
食品EC、産直ECの売上向上のヒントがたくさん得られます!
それでは長野氏流『B2B EC』についてぜひお楽しみください!
~第274回 ゲスト~
長野 泰昌 氏
株式会社豊洲漁商産直市場
代表取締役
東日本大震災を機に40歳未経験から水産業界の門をくぐる。漁師、地方卸売市場、中央卸売市場の業務を自ら経験し、さまざまな問題解決に向けた取り組みのひとつとして、業務アプリクラウドサービスKintone+BtoB EC Web受発注システムBカートを活用した大きな投資を必要としないECサイト「豊洲漁商産直市場」をスタート。これまで売上の殆どを占めていた電話・Fax受注からECサイト受注の構成比が短期間で上回り、売上規模も昨対を上回る実績を構築したことから「失敗しないDX化」のノウハウを共有する事で、水産業界全体を盛り上げたいと考える。